第500話 出発、ウメダの里へ
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「オネーサン……田楽おでんさんは、クマ国皆んなのお姉さんを自称しているんだサメエ。あと、会いたい場合は、屋台を引いてフラフラしている所を見つけるか、ウメダの里にある迷宮、〝ウメダのすごいジャングル〟の最奥まで行かないと駄目なんだサメエ」
桃太は、相棒の金髪長身少年、五馬乂と、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨の話を聞いて、とんでもない人物がいたものだと口をポカンとあけた。
「でも、あのひとなら、きっとジイチャンもむげには出来ないサメエ。ジイチャンがたくらんでいる三世界分離の方法についても知っていそうなんだサメエ」
「シャシャシャ。あの迷宮の奥まで行って会うのが困難だけど、相棒とサメ子なら、大丈夫だろう。付いていきたいが、オレとリンはクマの里から動くなって言われているんだぜ」
「乂も凛音さんも、怪我してるものね。今はまず体を治すのが一番さ」
桃太は乂や凛音と一緒に観光できないことが残念だったが、こればかりは仕方ない。
「いずれにせよ、桃太君達はこの後、田楽おでんさんがいるウメダの里に向かうのでしょう。カムロさんが地球と異界迷宮カクリヨ、異世界クマ国……三世界の分離を望んでいることは、先生達にも連絡するべきじゃないかしら?」
「わかった、そうする」
桃太は凛音のアドバイスに従い、更なる味方の協力を仰ぐことにした。
「遥花先生、呉栄彦さん。カムロさんとの話し合いの結果は、この報告書に書いた通りです。どうか知恵を貸してください」
桃太は獅子央孝恵宛に作成した書類を、担任教師の矢上遥花と助っ人講師? の呉栄彦にも見せて、助力を請うたのだ。
「獅子央孝恵校長から――地球諸国とクマ国の関係がぎくしゃくしている――と聞いていましたが、まさか民間の過激な活動家までが迷惑をかけていたなんて」
「クマ国がキレるのもわかる。おれ自身も、地球の一部のハネカエリが、名所を汚したり歴史的な芸術品を破壊したりて、環境問題やら社会問題の向上につながると主張するのは、理屈がさっばりわからんよ。単に報酬のためだと言われた方がわかりやすい。あそこにいる〝K・A・N〟のようにね」
三人は、地球日本でクーデターを起こしたばかりか、クマ国ヨシノの里を占領しようと工作し、絶大な迷惑をかけた七罪業夢の一行が広間でのんびり寛いでいる姿を見て複雑な顔をした。
「孝恵校長とも相談したいけれど、クマ国から地球は距離が遠すぎて、前に預かった通信機でも連絡は届かないんですよね?」
「ええ、桃太君が作ってくれたレポートは、私が式神で送ります。これも授業ですから手伝ってくださいね。――三世界分離計画については、私の方でも調べておきます」
「はい、よろしくお願いします」
「目的地のウメダの里はクマ国でも有数の交通の要衝と聞く。クマの里で一度送ったあと、先方で改めて送った方が早いかも知れないなあ」
このような話し合いを経て――。
西暦二〇X二年八月一九日。桃太と冒険者パーティ〝W・A〟は、クマの里に療養中の五馬乂と三縞凛音を置いて、カムロと共に寝台客車つきの蒸気機関車で旅だった。
あとがき
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