第497話 カムロ対策会議、迷走中
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「桃太おにーさん、リンちゃん。ジイチャンはそんな陰険な真似なんて、……するサメね」
「ダァムイット(くそったれ)! あのクソジジイは必要とあれば、とことん性格悪く立ち回れるからな」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太は不敬だと思いつつも、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨と、金髪の長身少年、五馬乂の意見に同意せざるを得なかった。
半世紀以上、ひとつの国、ひとつの世界を治めてきたのは伊達ではないのだ。
「カムロさんは守護霊だから、クマ国を長い時間離れると消滅しちゃうって言っていたよ。これって、本当なのかな?」
「……ザッツトルー(そうだ)。相棒、クソジジイは、異界迷宮カクリヨに入る際に、必ずクマ国各地の里長に遠征の許可を取っている。そうでないとクマ国を出られないし、身体が崩れたり、薄くなったりするらしい」
「ジイチャン、何度か消えかけてえらいことになったサメエエ」
桃太は、乂と紗雨の返事を聞いて、覚悟を決めた。
「紗雨ちゃん、乂。リンちゃん。俺はカムロさんを死なせたくないし、地球、異世界クマ国、異界迷宮カクリヨの三世界分離にも反対だ。計画を止める為に力を貸して欲しい」
「もちろんサメエ。一緒にジイチャンに目にもの見せるサメエ!」
「オールライッ。間違えた大人はぶん殴るのが、オレが目指す良い不良だぜ!」
「ニャン(乂……。いえ、ワタシが生き延びた理由は、きっと桃太君と共に、三世界問題に取り組むことでしょう。全力を尽くすわ)」
三人と、三毛猫に化けた少女は、手を重ね合わせ円陣を組んで、パァンと手を打ち合わせた。
四つの心が一つにまとまった瞬間だった。
「「というわけで早速、第一の手段。闇討ちをするサメエ(ぜ)」」
「「だからやめろってば」」
なお安いノリで無理やり貼り付けた協力は、バラバラになるまで一瞬ももたず、方針が決まった直後に紗雨と乂が猛然とダッシュ。
予測していた桃太が紗雨の手をとり、凛音が乂の後頭部にかみついて暴走を止めた。
「むふー。役得! じゃなくて、桃太おにーさん、奇襲ならワンチャンあるかも知れないサメエ」
「ダメだよ。カムロさんは紗雨ちゃんの性格をよくわかってるから、確実に待ち伏せているよ。乂が数日前に酒を盗みに入った時のことを忘れたかい? 罠でボコボコにされちゃったじゃないか!」
「シャシャシャ、ノープロブレム。相棒、今度はちゃんと高いヤツをかっぱらってやるぜ!」
「ナー、ニャー、ニャフン!(酒も飲んでないのに酔っ払ったことを言わないで。というか目的変わってるわよ)」
四人はすったもんだ迷走した挙句、襲撃はひとまず延期となった。
「乂、紗雨ちゃん、凛音さん。カムロさんを力づくで止めるのは、第一であっても最後の手段。師匠は簡単に勝てる相手じゃないし、第二の手段として三世界の分離を阻みたい」
あとがき
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