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第495話 旅行の誘い

495


(じゃあ、俺に解決できないことってなんだ? それは、カムロさんが八岐大蛇やまたのおろちを討伐する以上、俺を助けてくれた賈南かなんさんとファフ兄を殺めてしまう可能性が高いこと。更には、三つの世界の交流を断った時、地球が滅びかねないことだ)


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたは、異世界クマ国の代表、カムロの言葉を聞いて、冷や汗が止まらなかった。


(西暦一九六一年の秋。某軍事大国が行った新型兵器の暴走で、地球は異界迷宮カクリヨ、そして異世界クマ国と繋がった)


 五〇メガトン級の〝核兵器に似た何か〟が、北極海雪原に次元の〝裂け目〟をこじあけた結果――。

 地球は、異界迷宮カクリヨと接続し、伝説上の存在と思われていた〝悪魔や妖怪に似た怪物達〟の侵略を受けた。

 元凶となった軍事大国と周辺国家は抗戦するも、核兵器を含む現代兵器が一切通用しなかったために、怪物達に蹂躙されて崩壊。

 今や地球の半分が禍々しい〝赤い霧〟と〝黒い雪〟に包まれて、悪鬼羅刹あっきらせつうごめく不毛地帯と化している。


(別世界からやってくる邪悪な軍勢と戦う為に解き明かされたのが〝鬼の力〟で、それを使うのが冒険者だ)


 桃太ら冒険者は、異界迷宮カクリヨから鬼の力が生み出すモンスターと戦い、生活を維持するための資源を持ち帰り、荒廃した地球を維持、復興させた。

 そして、今ならわかる。鬼やモンスターと戦う為の手段、〝鬼の力〟を制御する技術は、異世界クマ国との交流でもたらされたのだ。


(地球は冒険者が社会の中心となった生活を五〇年以上も積み上げてきたんだぞ。カムロさんの言う、あるべき世界だの、リセットだのなんてハチャメチャな青絵図にのって、三世界の繋がりを完全に断ち切れば、冗談抜きで滅びかねない)


 そもそもカムロという大黒柱を失った時点で――クマ国も無傷ではすまないだろうに、それでもやると決めた師匠の胆力に、桃太はぞっとした。


(考えろ、考えろ。俺が今できること、為すべき事を!)


 ともかく今は時間を稼がねばならない。

 三世界分離計画を、実行させるわけにはいかない。


「カムロさん。なにもそんなに急ぐことはないんじゃないかなあ。俺も弟子として、後継者探しを手伝います」

「そうか。桃太君がそう言ってくれるなら心強い。まあゆっくりしたまえ。ヨシノの里を乗っ取ろうとした七罪業夢ななつみぎょうむとその部下達、テロリスト団体〝K・A・Nキネティック・アーマード・ネットワーク〟は監視するが、冒険者パーティ〝W・Aワイルド・アドベンチャラーズ〟の皆はクマ国で自由にしてくれて構わない」


 カムロはそう告げたあと、いいことを思いついたとばかりに、パンと膝をたたいた。


「そうだ。冒険者パーティ〝W・Aワイルド・アドベンチャラーズ〟の皆が、僕と一緒に旅行するというのはどうかな? 相互理解の良いとっかかりになるだろう。君達が先の戦いでヨシノの里を救ってくれたことで、クマ国各地で大人気なんだよ」


 桃太はカムロの提案を聞いて、断交までにはまだ時間があると知ってほっとした。

 同時に、これが囮の策(ブラフ)ではないか、あるいは自分をクマ国に取り込む仕込みではないかという疑いが心中に浮かんで、感情がかき乱された。


「出立は明後日の八月一九日。目的地は、ウメダの里にある。遊戯用の巨大な地下迷宮、〝U・S・Jウメダのすごいジャングル〟だ。楽しみながら特訓できる人工ダンジョンで、クマ国きっての観光地なんだよ」

「ユニバ……じゃなかった、ウメダのすごいジャングルって、かっとんだ名前ですね。ぜひ見に行きたいです」


 桃太は表面上はくすりと笑いつつ、肝は冷え冷えだった。


(すぐに紗雨ちゃんと乂、凛音さんに相談しよう。この話は俺の手にあまる)

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] >ウメダのすごいジャングルって、かっとんだ名前ですね。ぜひ見に行きたいです 獺、2「「悪いことは言わん、やめとけ!」」
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