表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
500/797

第494話 恐怖の検証

494


(落ち着け。たとえカムロさんであっても気圧けおされるな。ひとつひとつ検証して、なんとか活路を見出すんだ)


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたは会談場所である和室で深呼吸して、文机ふづくえや朝顔が描かれた掛け軸が織りなす日と影のカタチを一望し、風鈴の音を聞きながら……集中しようと目をつむった。


(まずカムロさんは異世界クマ国の守護霊だから、異なる世界――地球や異界迷宮カクリヨに長時間滞在すれば消滅してしまうらしい。だから、どんなに強くても、これまでは八岐大蛇やまたのおろちと鬼の軍勢を根絶できなかった)


 桃太は異世界クマ国の代表であり、自身の師匠であるカムロが先に述べた言葉を思い出す。


『僕は死に物ぐるいで戦った。

 地球へ逃げた一体と封印された一体こそ討てなかったものの、八岐大蛇の首と呼ばれる強大な八体のドラゴンのうち六体を打ち倒し、いくばくかの命を救えた。

 仲間と共に制圧された各地の里を取り戻した旅路は、今でも輝かしい想い出だ』


 桃太は、カムロが討ち漏らしたという二体のドラゴンに覚えがあった。

 地球へ逃げた一体――とは、すなわち冒険者育成学校焔学園二年一組のクラスメイトである、昆布のように艶の無い黒髪の少女、伊吹賈南いぶきかなん

 封印された一体――とは、赤茶けた錆びた短剣の内部に引きこもる、金髪を輪ゴムで留めた青年ファフ兄。

 二人のことで相違あるまい。なにせ彼や彼女自身、八岐大蛇の首、あるいはエージェントだと自認しているからだ。


(八岐大蛇は半世紀以上の時間をかけて、討たれた六体のドラゴンを再生、あるいは新生させた。ドラゴンは概念的な存在だから復活も可能だと、ファフ兄さんが教えてくれた)


 そして八本の首が揃った八岐大蛇は、伊吹賈南のいる日本で暴れ、桃太が三、四、七の首を落とした。

 そして、第五の首であるファフ兄が封印されている以上――。

 残っている動ける首は、一、二、六、八の四本となる。


(カムロさんは自身の消滅までに四体のドラゴンを討ち、なんらかの手段で、地球、クマ国、カクリヨの三世界を永久分離させるつもりらしい。師匠を死なせないのは前提として、このとんでもない計画が成就した時、俺が一番困るのはなんだ?)


 桃太の目蓋の裏に現れたのは、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼ぎんぱつへきがんの少女、建速紗雨たけはやさあめだった。


(それはもちろん、紗雨ちゃんに会えなくなることだ)


 ただし、桃太がそうであるように、紗雨が素直に従うとは思えない。

 相棒である五馬乂いつまがいや、縁の深い三縞凛音みしまりんねもまた抜け道を作ることに全面協力してくれるだろう。


(どうしようもなくなったら、紗雨ちゃんに地球に来てもらうか、俺がクマ国に行けば良い)


 地球日本の冒険者組合を束ねる獅子央ししおう孝恵たかよしも、クマ国代表のカムロも反対はすまい。

 桃太は、これまでテロリストに堕ちた勇者パーティ三つを鎮め、八岐大蛇の首三つを打倒した。自身と紗雨の受け入れを、交渉で引き出せるだけの功績をあげた自負はある。


(じゃあ、俺に解決できないことってなんだ? それは、カムロさんが八岐大蛇を討伐する以上、俺を助けてくれた賈南さんとファフ兄を殺めてしまう可能性が高いこと。更には、三つの世界の交流を断った時、地球が滅びかねないことだ)

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

ブックマークや励ましのコメント、お星様、いいねボタンなど、お気軽にいただけると幸いです(⌒▽⌒)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >紗雨ちゃんに地球に来てもらうか、俺がクマ国に行けば良い 紗雨ちゃんが地球に来たら、合法ハーレム築けなくなるから、桃太がクマ国移住ですね、ワカリマス
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ