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第490話 武神が守りし今

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「僕も代表に就いてから危機意識を改善しようと頑張ったんだが、三つ子の魂百までというか、クマ国民はどうにもお人よしでね。防諜部隊ぼうちょうぶたいすらも業夢ぎょうむ奸計かんけいに容易く騙されてしまったのは、さすがにいただけない。そして百年前は、もっと危なっかしかったんだよ……」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたは、異世界クマ国の代表カムロが、牛に似た仮面の奥から絞り出した声を否定しようとして、否定できなかった。


(前に来た時会った子達も、余所者の俺をすぐに受け入れてくれたし……、俺たちが泊まった旅館の川湯温泉では、千隼ちはやさんが賈南かなんさんにからかわれて前後不覚になっていた。クマ国の人たちって、お人好しすぎるところあるものなあ)


 防諜部隊ヤタガラスの小隊長、葉桜千隼はざくらちはやは理性的な少女だ。だが、元〝鬼勇者ヒーロー〟七罪業夢とテロリスト団体〝K・A・Nキネティック・アーマード・ネットワーク〟が作り上げた簡単な改造写真に騙されて、桃太達と刃を交えた。

 朴訥ぼくとつであるということは、善意の中では望ましい性質だが、悪意の中では格好のエサになってしまうのだ。


「クマ国の民草は、八岐大蛇やまたのおろちと鬼の軍勢に騙され踏みにじられ、ろくな抵抗もできずに狩人や衛兵といった防衛戦力を喪失。矢つき刀おれて武器すら失い、ここクマの里に追い詰められた」


 桃太はカムロの回想にごくりと生唾を飲んだ。

 半世紀前。ここクマの里は文字通り、クマ国人類最後の砦となったらしい。


「そうして、僅かに残ったレジスタンスが乾坤一擲けんこんいってきの策として試みたのが、過去に八岐大蛇を追い払った武神スサノオの召喚だ。

 だが、追い詰められた陣営の悪あがきなんて簡単に成功するものじゃない。彼らが呼び出せたのは本物ではなく、僕のような見かけだけの幽霊だった」

「見かけだけなんて言わないでください」


 桃太は思わず声をあげたものの、カムロの声色は低くハリがなかった。

 

「そうだね。儀式の結果、僕には人並み外れた力と、スサノオと呼ばれた英雄の記憶が与えられた。ヒトがいない、モノがない、組織すら一から作らなければならない絶望的な状況だ。そんな中、一千年前に竜殺しを成し遂げた男の経験は得難い指針となったよ」


 桃太にはよくわからないが、カムロは窮地を乗り越えるための手段が見えていたらしい。


「僕は死に物ぐるいで戦った。

 地球へ逃げた一体と封印された一体こそ討てなかったものの、八岐大蛇の首と呼ばれる強大な八体のドラゴンのうち六体を打ち倒し、いくばくかの命を救えた。

 仲間と共に制圧された各地の里を取り戻した旅路は、今でも輝かしい想い出だ」


 この一言を告げた時だけ、カムロは晴々とした横顔を見せた。


「でも、今になって思うんだ。僕がうまくやれたのは、前世界滅亡のあと、クマ国創世を成し遂げたスサノオの知識という解答手引書アンチョコがあったからじゃないかって」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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[一言] 某タイチョー「たかが知識を得たぐらいでコトリアソビと同レベルのことができるわけがないだろ、非常識な」
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