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第482話 桃太とカムロの会談

482


 西暦二〇X二年八月十七日早朝。

 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたが、三日間の休養で英気を養った後――。

 かねてからの打ち合わせの通り、先触れの使者である前髪の長い鴉天狗、葉桜千隼はざくらちはやが迎えにきた。


「地球日本からのお客人、出雲桃太様をクマ国代表、カムロ様のお屋敷にお連れします。三日間の滞在、いかがでしたか?」

「最高だったよ!」


 桃太は三日の連休で遊び倒して上機嫌だったが、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼ぎんぱつへきがんの少女、建速紗雨たけはやさあめは不機嫌そうに頬をぷうと膨らませていた。


「サメー。桃太おにーさんについて行きたいけれど、代表同士の話し合いに首をつっこむなって怒られたサメー。ちょっと小一時間お願いした程度ですねるなんて、ジイチャンは器が小さいんだサメー」


 紗雨は保護者であるカムロに対し、会談への同席を志願したものの、却下されてしまったのだ。


「紗雨ちゃん、あまり無理を言っちゃいけないよ。帰ってきたら、また遊びに行こう? だから機嫌直して」

「紗雨姫、カムロ様はヨシノの里でテロリスト〝K・A・Nキネティック・アーマード・ネットワーク〟の一軍を討たれたばかりなのです。どうかもう少しお労りください」

「サメエ……」


 桃太と千隼が紗雨をなだめていると、いつもの不良服に身を包んだ金髪の長身少年、五馬乂いつまがいがコブだらけの頭をにゅっと突き出して口を挟んだ。


「シャシャシャ。相棒、サメ子の言う通りだぜ。昨夜、ちょっとビールをいただきに屋敷へ忍び込んだら、甘酒にすり替えられていた。おまけに、盗賊避けの罠にかかって青あざだらけになったんだぜ。器が小さいとは思わないか?」

「それは、乂の肝が太……、いや面の皮が厚いだけだと思うよ」

「乂様は念の為、ヤタガラスの留置所までいらしてください」

「ギャー、ヤブヘビ!?」


 桃太は紗雨へ手を振り、鴉天狗達に包囲された乂を置いて、千隼と共に勝手知ったるカムロの屋敷を訪れた。


「カムロさん、素敵な旅館に泊まらせてくれて、ありがとうございました」

「なあに遅れたのは僕だからね。それよりも桃太君。先の戦いで、七罪業夢ななつみぎょうむが変じた八岐大蛇・第七の首、吸血竜ドラゴンヴァンプを討ってくれて、本当に助かった」

「いえ、師匠に教わった経験と、〝生太刀いくたち草薙くさなぎ〟があったからです」


 師弟は譲歩し合ったあと揃って、からからと笑った。


「葉桜。焔学園二年一組の生徒達が川湯に作った流水滑り台(ウォータースラーダー)を文化財指定したいという旅館の女将からの嘆願書だが、許可したので役所へ回してくれ。その後は引き続き彼らの護衛と、テロリスト達の監視を頼むよ」

「はい、拝命いたしました」


 千隼が去った後、桃太とカムロは青いアサガオの掛け軸がかけられた来客用の茶室で、向き合って歓談を始める。


「さて、桃太君。二人だけだから、堅苦しい前置きはなしにしよう。茶と羊羹ようかんを用意した。地球日本のことが心配だろう? 冒険者パーティ〝W・Aワイルド・アドベンチャラーズ〟が、クマ国に向かって旅立った七月一二日からの約一ヶ月間、何があったのか。こちらが把握した情勢を伝えるよ」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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[一言] 紗雨「ジイチャンなんて、1日100時間労働を毎日続けていればいいんだサメ―」 河豚(対抗して膨らみ中)
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