第471話 温泉と熱気
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「さあ、めくるめく愛の歌を奏でようではないか」
「公然わいせつ罪の現行犯! 逮捕おおおおっ!!」
八岐大蛇のエージェントである伊吹賈南は、下はお尻が丸見えのTバックをはき、上は胸を僅かに隠す二本の横ヒモの如き水着を身につけ、冒険者パーティ〝W・A〟の代表である出雲桃太と、中核メンバーの焔学園二年一組男子生徒をありあまる色気で悩殺しようとした。
しかし、クマ国の治安維持組織であるヤタガラス隊の一員、葉桜千隼によって即座に取り押さえられ、手錠をかけられてしまう。
「なぜに? 風呂場じゃぞ。妾がここで誰と愛を交わそうと個人の自由じゃろう。警察の民事介入反対!」
「公然わいせつ罪の現行犯だからしょっぴくんですよ。旅館内でその格好が許されるわけないじゃないですか!」
桃太ら男子生徒一同も、異世界クマ国という非日常に身をおいて、若干ながら頭がピンクになっていたものの――。
「賈南さん、さすがに目の毒だよ」
「色っぽいとは思うけど、あそこまで行くと怖いよなあ」
「ええ、蛇に睨まれたカエルみたいな気分だ」
「うーむ、恥じらいって大切なんだな」
と、賈南の逮捕を当たり前のように受け入れてしまう。
「ば、ばかなあああ。勝ちまくりモテまくりのハーレムタイムだったはずなのにいいいい」
こうして賈南はドップラー効果を残して川辺から鉄格子つきの見張りテントへと連れ去られ、彼女の野望は儚く散った。
「こほん、桃太お兄様。紗雨さんとひっつき過ぎでは?」
「あ、ごめん。紗雨ちゃん」
「サメメメ、桃太おにーさんはもっとくっついてもいいのにサメエエ」
そんな賈南と入れ替わるように天幕から出てきたのは、呉陸羽だ。
「えへへ。ぼ、冒険してみました」
最年少である彼女は山吹色の髪をツインテールに結び、クリーム色を基調に、オレンジ色のフリルで飾られたビキニと、腰をリボンで結ぶようなサイドタイボトムを身につけていた。
「可愛いよ、リウちゃん。一緒に入る?」
「サメー、紗雨より年下なのに色気があるサメー」
「「い、癒される」」
男子生徒達も、陸羽の爽やかな色気にほっと胸をなで下ろし――。
「あ、男子達ってばやっらしーの」
「BUNOOO!」
琥珀色の虎に似た式鬼ブンオーを連れた、サイドポニーの目立つ少女、柳心紺に指摘されて桃太達は思わず赤面した。
「柳さん、似合っているよ」
「やった」
「「こういうのがいいんだよ。こういうのが」」
彼女は活発なイメージから外れることなく、薄青いタンクトップに似たタンキニと、濃紺のデニムパンツに似たショートボトムをはいていた。
「出雲君、どうかな」
祖平遠亜は瓶底眼鏡こそつけたままだったものの、肩紐のない赤く華やかなバンドゥトップビキニと、スカートに見えるハイウエストボトムという凝ったおしゃれ着だった。
「大人っぽくて良いと思う」
「選んだ甲斐があったわね」
「「いずもおおっ……」」
サイドポニーを揺らして喜ぶ心紺や、メガネの奥で瞳を柔らかに細める遠亜達を見て、男子生徒達は心中で怒りを燃やしたものの……。
次の瞬間、河原はどよめきに取って代わられた。
「「おおーっ」」
色とりどりの水着で川にやってくる焔学園二年一組の女性徒達。その最後で舞台に現れたのは、担任教師の矢上遥花だった。
あとがき
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