第469話 紗雨の艶姿
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((早く女子の水着姿をみたい!))
西暦二〇X二年八月一四日午前。
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太と、彼の学友である焔学園二年一組の生徒たちは、胸中に高ぶる衝動を抑えるために、たわいもない話題に花を咲かせたり、川に向かって石を投げ、水切り遊びに興じていたりした。
「くない状の石を拾って、投げるときに回転させる。よしっ、一二回跳ねたぞ」
「やるじゃねえか。だがな出雲、円形の方が飛ぶんだよ。そら、一四回!」
「良いことを聞きました。やったあ、一五回」
「は、八回か。まだだっ、こうなった〝鬼の力〟で川面を凍らせてやるっ」
「「反則じゃないか!!」」
桃太もまた、モヒカンの雄々しい林魚旋斧や、短身痩躯のワイルドな少年、関中利雄、七三分けの長身少年、羅生正之らと、ドッタンバッタン大騒ぎしながら、水着に着替え終わった女子生徒の到着を待っていた。
「そういや、あの川で泳いでいる青や緑の魚って、熱で茹であがらないのかな……」
「言われてみれば、不思議だな。川には温泉のお湯が流れ込んでいるんだろう?」
「出雲サン、林魚サン。南米などに棲息するアロワナやピラニアといった熱帯魚は、水温三〇度くらいまでは泳げるらしいよ」
「関中の言う通り、あれらの魚もそういった熱に強い種なのかも知れないな。食べられるか、レスキューの葉桜さんに聞いてみるか」
そうやって会話に花を咲かせながらも、ソワソワと待ちかねていたのだが――。
「桃太おにーさん、お待たせサメー」
声をかけられて振り返り、桃太は銀髪碧眼の少女、建速紗雨に目を奪われた。
「きれい、だ」
「「………」」
桃太はかすれたような声で一言だけつぶやいて声が出ず、他の男子生徒達も息を飲んで言葉を失っていた。
「サメ? どうサメ、可愛いサメ?」
紗雨は見せつけるように軽くジャンプをする。
彼女が着ているのは、青と銀を基調とするワンピースタイプの水着だが、背中が大きく空いていて真珠のような肌が露わになっている。
紗雨本人も気にしているのか、同色の水泳用上着を羽織り、サメ型の浮き輪を手にしているものの……。
桃太は、普段は着ぐるみで見えない背中や長い足を見て、ドキンと心臓が高鳴った。
「もちろんだよ、紗雨ちゃん」
桃太はまるで宝物を抱き寄せるように、慎重に紗雨に手を伸ばしたが……。
心が弾むあまり、苔むした川底の石で足元がすべってバランスを崩して、力強く抱きしめてしまう。
「サメメメっ。やったサメエエ」
桃太の腕の中で紗雨は満面の笑みを浮かべて、快哉を叫んだ。
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紗雨ちゃんの水着姿です♪
あとがき
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