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第468話 燃える男子魂

468


「「おおーっ、さすがは家並に入ると噂の〝内部空間操作鞄アイテムバッグ〟、大量に入っている。一〇〇着以上あるんじゃないか!?」」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたが、担任教師の矢上遥花やがみはるかから預かった黒革の手提げ鞄をひっくり帰すと、圧縮されていた空間が解凍されて、天幕の片隅を埋め尽くすほどに様々なサイズやデザインの水着が大量に出てきた。


「お、鏡も大量に用意されているし、石けんだけじゃなくて、日焼け止めクリームや香水まであるぞ」

「こっちには浮き輪や、釣り竿もある。準備がいいなあ」


 桃太を含む焔学園ほむらがくえん二年一組の男子生徒達は、クマ国代表カムロの好意に感謝しつつ、天幕奥に並べられた全身鏡の前で試着を繰り返した。


「やっぱり動きやすいのがいいよね」


 最終的に、桃太はピンク色のラインが入った白いスイムトランクスを選び――。


「鍛え上げたおれの肉体美を見せてやる」


 モヒカンの雄々しい林魚旋斧はやしすおせんぶはいかにも男らしい三角形の黒ビキニパンツをはき――。


「温泉につかるのもいいし、泳ぐのも楽しそうだけれど、あとで釣りもしたいからなあ。着替えるのも面倒だし、この波模様のショートパンツにしよう」

「ほう、次は魚釣りで勝負するか? 迷彩柄のロングパンツ、悪くないな」


 野性的な小柄な少年、関中利雄せきなかとしおと、神経質そうな七三分けの長身少年、羅生正之らしょうまさゆきはそれぞれ水陸両用のサーフパンツを着用――。


「酒を飲んだあとに泳ぐのは怖いし、若い連中の前で着飾るのも厳しい。ここは大人らしいデザインにするかね」


 唯一の青年男性である呉栄彦くれはるひこは、灰色のボードショーツを掴みだした。


「これは、どうだ?」

「若干大きいなあ」

「こっちは小さい」

「ボクはこれにするよ」

「マジ?」


 他の男子生徒達もスタンダードな海パンから、まるで特撮の戦闘員みたいな全身一体型のスイムスーツまで、それぞれ好みの水着を選びとった。あとは身体を洗うなり、掛け湯をして川風呂に入るだけだ。


「イエーイ! ここ、外交用施設だからめったに利用できないんだぜ。骨折にも効くのかな?」

「ニャー。ニャン、ニャー(効くんじゃないかしら。猫だから手を離すと溺れるわよ。ちゃんと支えていてね)」


 事実、クマ国に住んで時間の長い五馬いつまがいはほぼ半裸姿だったこともあり、瞬く間に着替えるや、天幕の外で待っていた三毛猫姿の三縞凛音みしまりんねを抱いて川湯につかり、足を伸ばしてリラックスしていた。


『えーい、イチャイチャしやがって。僕を水に浸けるな。これ以上錆びたらどうするつもりだ、このリア充ども!』


 腰に結んだ錆びて赤茶けた短剣に宿る意思、ファフ兄が不服そうに発光信号で抗議するも気づくこともない。


「良い湯だなあ」

「業夢様にも入っていただきましょう」

「溺れさせないよう気をつけないと」

「フガフガ」


 また索井靖貧さくいせいひん郅屋豊輔しつやほうすけといった元勇者パーティ〝K・A・Nキネティック・アーマード・ネットワーク〟の中年男性達も代表である老人、七罪業夢ななつみぎょうむを交代で介抱しつつ、湯を堪能している。


「まだかな、ごほん」

「いやあ、いい風だ。げふん」


 しかしながら、冒険者パーティ〝W・Aワイルド・アドベンチャラーズ〟の男子生徒達は、天幕から出て川辺でだべりったり、川面に石を投げて水切りをするなど、風呂に入ることはなかった。

 いかにもな日常を演じているが、彼らの胸中にあったのはひとつの衝動だろう。


((早く女子の水着姿をみたい!))

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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[一言] 案内人「女性のかたは、隠し通路を通って別の露天温泉へどうぞ」
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