第467話 水着とふんどし
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「「うおおお、川そのものが露天風呂なのかああ!?」」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太をはじめ、焔学園二年一組の生徒達は、背に黒い翼が生えた前髪の長い中性的な鴉天狗の少女、葉桜千隼に案内された川湯に驚きの声をあげた。
「防犯と安全を鑑みて、裸で過ごしていただくわけには参りませんので、冒険者パーティ〝W・A〟の生徒の皆さんは、水着、下着をつけての入浴をお願いします」
栗色の髪を赤いリボンで結んだ担任教師、矢上遥花は、雄大な温泉風景に感動する生徒達に向かって、黒と茶、色の違う二つの手提げ鞄をかかげて見せた。
「この〝内部空間操作鞄〟の中に、獅子央孝恵校長が準備してくれた水着が入っています。生徒の皆さんと呉栄彦さんは、男女別に建てられたあちらの天幕を利用し、好きな水着に着替えてください。石けんも川を汚さない特別性のものが用意されているので、絶対に私物は使わないように」
「「はーい!」」
「「わかりましたー(サメー)」」
桃太達は黒い手提げ鞄を、紗雨達は喜び勇んで更衣用テントに飛び込んだ。
取り残されたのは日本政府に反旗を翻した元勇者パーティにして、現在拘束中の中年テロリスト男性はおよそ一〇〇人だ。
「また元勇者パーティ〝K・A・N〟の団員の皆さんは、こちらの鞄にカムロ様が用意されたふんどしがあるのでお使いください」
「ふんどしかあ。戦闘用の水着はダメかな?」
「良いわけないでしょう。温泉に入浴できるだけ、感謝しましょう」
重傷を負った代表、七罪業夢の代わりにkan残党をまとめる、索井靖貧や郅屋富輔は苦笑しながら、千隼から白いふんどしの入った灰色の鞄を受け取った。
「オレの海パンは、カムロの家に置いてあったから取ってくるか。それとも相棒達の余りを借りるか」
そして予定になかったといえば、クマ国住人の金髪少年、五馬乂もなのだが――。
「乂君には、五馬碩志様から専用の衣類を預かっています」
「グッジョブ! マイブラザー、気が利くじゃないか」
乂はニコニコと喜んで遥花から風呂敷を受け取ったものの、中に入っていたのは真っ赤なふんどしだった。
「碩志いいっ。あの野郎、裏切ったな。最初からからかうつもりで決めていたな!」
「お似合いですよ。気風がいい男ぶりです」
「なーっ(プププ)」
乂は千隼にこそ褒められたものの、三毛猫に化けた幼馴染、三縞凛音に笑われたことで意固地になり……。
「わーったよ。これにすればいいんだろ。脱衣断行! なんてなっ」
「フシャアア(デリカシーをかんがえてっ)」
「乂様。いくら貴方でも逮捕しますよ」
天幕に入らずにその場で着替えようとして、凛音に爪でひっかかれ、千隼によって制圧された。
「ノーっ! このオレがこんなに容易く負けるなんてええっ」
『まったく、利き腕が骨折しているのに勝てるわけないだろう』
彼の腰に刺した短剣に宿る意思、八岐大蛇・第五の首であるファフ兄が、ピカピカと点滅し、とツッコミを入れたものの、既に桃太は天幕の中に入っていたため、気づくことはなかった。
「乂も楽しそうだし、俺たちも選ぼうか」
「「おおーっ、さすがは家並に入ると噂の〝内部空間操作鞄〟、大量に入っている。一〇〇着以上あるんじゃないか!?」」
あとがき
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