第453話 意外な来訪者
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「「やったあああああ」」
「「カムロ様万歳!! クマ国に栄光あれ」」
クマ国代表を務める牛に似た仮面をかぶる幽霊、カムロが陣頭に立った途端、引退を望む彼の本心とは裏腹にヨシノの里における混乱は収束。
カムロは防諜部隊ヤタガラスと協力することで、里の各地に入り込んでいた工作員をわずか二日のうちに一人残らず捕まえて、犯人達がすり変わっていたクマ国民の救出に成功した。
「もう一度、皆に会えて良かった。アカツキや、ヤタガラス隊もよくやってくれたね。僕のおごりだ。どーんとやってくれ」
カムロは捜査の最終日を、ヨシノ住民の慰撫と、ヤタガラス隊員の慰問で過ごした。
(七罪家の侵略は、幸いにも初期段階で阻止できた。しかし、僕の見えていないところ、たとえばオウモが差配する〝前進同盟〟の影響下にある里は危ういな。早めに駆けつけられるよう、鉄道の拡張や新型の機関車を用意したいところだが、準備には相応の時間がかかる。まずは捜査の移動手段として新型バイクを用意するか)
カムロが、里長に招かれた屋敷でバイクの設計図を眺めていると……、ヤタガラス隊の長アカツキを含む手練れ達による厳重な警備をかいくぐり、不審な闖入者がやってきた。
「うらめしやっほーっ。カムロっ、元気してるう。おばちゃん幽霊だよ!」
その正体は白金色の髪と、〝鬼の力〟を象徴する赤色、〝巫の力〟を意味する青色という、色の違う二色の瞳を持つ巫女服姿の優美な幽霊だ。
どことなくカムロの養女、建速紗雨に似ているものの、年齢差のせいか胸と腰つきの丸みは目に見えて違った。
「僕のようなジジイを相手に、おばちゃんを名乗るんじゃない。カミムスビ……ノホホン女神、今日はずいぶん上機嫌だな」
「カムロは、また難しい顔をしているね。だいたいの黒幕だった七罪業夢を捕まえて、クーデターの首魁である六辻剛浚も追い詰めたんでしょう。地球日本の戦いはもう終わるんじゃないの?」
カムロは額に手をあてた。
太古の荒御魂。
あるいはカミムスビという役名で呼ばれるカミサマになってしまった眼前の娘は、クマ国という世界の維持に力の大半を使っているため、ここぞという場面以外では下界に干渉できない。
そのせいか、一千年もの長い時を越えてきた割には無知なところがあった。
「勝って兜の緒を絞めよってね。防諜部隊ヤタガラスの機動力を増やすために、新型蒸気バイクを開発しようと思っている。ちょうど乂が伸び悩んでいるようだから、アイツに試験運転をやってもらうよ。桃太君も変身すれば使えるようだから、きっと役に立つさ」
「カムロは昔から、工作が得意だものね。どんなバイクができるのか楽しみだなあ」
カムロは肩をすくめて設計図から目を離し、屈託なく笑う女神を正面から見据えた。
「ノホホン女神は〝鬼神具・太陽の鏡〟を使って桃太君に分霊を送っただろう。なにか変わったことはなかったか? たとえば、乂の短剣に宿っている狡猾なヘビが、桃太君を洗脳するような、悪事を企んでいたりだとか」
「怖いこと言わないで。だ、ダイジョブダヨ?」
あとがき
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