第452話 カムロのヨシノの里大掃除
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「カムロ、気づいているかい? 異界迷宮カクリヨと八岐大蛇を滅ぼし、地球とクマ国の繋がりを断ち切って――〝あるべき元の世界に戻す〟。クマ国代表らしい、実に保守的な目的サ。だが、そのゴールは、果たして出雲桃太クンと、彼の上司である獅子央孝恵代表に受け入れられるものかね?」
異界迷宮カクリヨと繋がって既に半世紀。
地球は既に、冒険者と迷宮の存在を前提とした世界に変化して久しい。
「ここからが本番だよ。吾輩とカムロ、どちらの戦略が適しているか、勝負しようじゃないか」
かつての仲間であるオウモの宣戦布告を、カムロは果たしてどう受け止めていたのだろう?
「……僕はクマ国を守るため、異界迷宮カクリヨや地球と永久に分離させることを願っている。しかし、オウモはきっと根っこの部分で間違えているぞ。未来を選び、作るのは僕でもお前でもない。桃太君や石貫満勒、僕が鍛えてお前が育てた子供達だ」
西暦二〇X二年八月下旬。
異世界クマ国の代表である、牛仮面をかぶった足の見えない幽霊カムロは、愛弟子ある出雲桃太ら、冒険者パーティ〝W・A〟をクマ国クマの里の旅館に預けた後、〝転移門〟を開いてヨシノの里に舞い戻った。
「とはいえ、目に届く場所の掃除だけはすませておかないとね」
クマ国侵略の橋頭堡として里の占拠を企んだ、日本国指定のテロリスト団体〝K・A・N〟団員の捜査を開始。
「バレたか。こ、こうなったら街に火をつけて、逃げるぞ」
「あーばよっと、ガハハハ」
ヨシノの里の住民が木造瓦建の家々を出て、神社や寺子屋に避難をはじめたことで、地球から侵攻してきた犯罪者達も危機に勘づいて放火し、逃亡をはかったものの――。
「カムロ様、上空からの観測、おくります」
「アカツキ、でかした。雷鳴よ、嵐をよべ」
「「ぐあああああ」」
カムロは鴉天狗のアカツキと協力して即座に大雨を降らせてボヤを消し止め、放火犯達を髪の毛がチリチリになるまでこんがり雷で焼いた。
「ええい、大将の七罪業夢様が捕まった以上、後のことは知ったことか」
「これこそクマ国崩しの大本命、ケラウノス二号機だ!」
それを見た破壊魔達は、密かにヨシノの里の郊外で建造していた全長一〇メートルに及ぶ巨大な機械人形、神鳴鬼ケラウノス二号機を起動して追っ手を討たんとするも――。
「カムロ様。ヤタガラス隊、たった今、里住民の避難を完了しました」
「ご苦労様。アレは八岐大蛇に魅入られた元勇者、四鳴啓介が使っていたからこそ天下無双に強かったんだ。カタチだけ真似て魂の入ってない鉄屑に、なんの価値がある?」
カムロは雷でつくりあげた二振りの剣で、鋼の巨人の手足をおとし、胴を割り首をはねて、ずんばらりと切り捨てた。
「いっ、いくらなんでも、理不尽じゃないか!?」
「こうなれば、人質をとるまでよ。この子供達がどうなってもいいのか」
馬鹿者共は〝影の使役術〟を使って、ヤタガラス隊の防衛網を突破、里の住民達の避難先にのりこみ恥知らずにも人質をとったものの……。
「悪党どもはまとめてゴミに出すとしよう。〝生太刀・草薙〟!」
「「半径二メートルじゃないのかよ、ぎゃああああ!」」
カムロは、弟子の桃太とは違い、半径五〇〇メートルを超える、敵味方識別能力付きの広範囲攻撃で残党を瞬殺した。
「「やったあああああ」」
「「カムロ様万歳!! クマ国に栄光あれ」」
あとがき
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