第449話 一葉朱蘭の謀略
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鉛色髪の巨漢青年、石貫満勒が見守る中、黒騎士は日本人形めいた少女ムラサマの手を取って踊り、戦勝の宴はおおいに盛り上がった。
「「いやっふうう! 冒険者パーティ〝G・C・H・O〟万歳!!」」
こうして満勒達がひとときの安らぎを得ていた頃、陰でひっそりとうごめく者達がいた。
「くそ、裏切り者は誰だ? どいつもこいつも怪しい。あのニワトリ娘、六辻詠なんぞに惑わされおって!」
本来の当主である六辻詠から元勇者パーティ〝SAINTS〟を奪いとり、いまやクーデター軍の総指揮官となった六辻剛浚の判断は、全面的には間違ってはいなかった。
少なくとも、身内に裏切り者がいることまでは察知していたのだ。されど、剛浚は詠を警戒するあまりに、他勢力の干渉があることを見落とした。
「よしタイミングはばっちりだ。亜大、〝獰蛇城〟にいる日和見連中を取り込むよ」
「さすが朱蘭様。言う通りに隊長級の冒険者につばつけておいて良かったぜ」
クーデター軍の拠点が、〝獰蛇城〟のみとなった直後――。
満勒達の〝豹威館〟攻略戦を遠目から観察していた第三勢力、元一葉家の当主であり崩壊した勇者パーティ〝J・Y・O〟残党の取りまとめ役、一葉朱蘭と、彼女の腹心である離岸亜大、そして、二人に助力する、元七罪家の執事、晴峰道楽が動き出し、クーデター軍から半数近い人員を引き抜いた。
「……なんという手際の良さよ。古巣の七罪家や〝K・A・N〟からの合流も多いな。おかげで助かったが、やっていることは獅子心中の虫ではないか」
朱蘭、亜大、道楽の三人は七罪からの逃亡者と、六辻からの離反者を統合し、冒険者パーティ〝G・C・H・O〟を資金面から支える異世界クマ国の過激派団体〝前進同盟〟の長、オウモに合流を持ち掛けた。
「久々だな。オウモ、新しい冒険者パーティを設立したと聞いて、戦力を用意したよ」
「フフフ、そいつは重畳……って、雑兵といえ見覚えのある奴らばかり。たった今、裏切ったばかりの人員とか連れて来られても困るんだがネ!」
オウモは紫色のフルプレートアーマーで武装して蒸気バイクに乗り、待ち合わせ場所に到着したものの、集まった冒険者達の姿を見て憤慨した。
「キハハハハ。それを言い出したら、アンタが統率しているクマ国の過激派団体〝前進同盟〟が出資している地球団体の大半が怪しいだろうに。債務は踏み倒すのが当たり前、隙が有っても無くても裏切る。そんな他国の自称レジスタンスに金をタカられて、随分出血したときいているよ」
「ぐぬぬ」
しかしながら、そここそ長い付き合いの朱蘭はしれっと反撃し、オウモは図星だったので言葉を失った。
「オウモ、アンタの目的は、異世界クマ国を巻き込まないよう、地球で八岐大蛇を食い止めることだろう? まったく信用のない連中よりは、我々の方が付き合いあるだけマシだと思うがね」
「わかったヨ、朱蘭。離脱者のうち、名前の目立っていない人員は〝G・C・H・O〟から、〝SAINTS〟と〝K・A・N〟にスパイとして派遣していたことにするネ。大半は肉盾にしかならんだろうが、働きによっては独自開発したパワードスーツを与えるヨ」
あとがき
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