第448話 〝豹威館〟攻防戦、決着
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「キーキーッ。こんな、こんなあ」
どうしようもない悪党だった祁寒鼠弘は、砕けゆくネビロスの鬼面から断末魔の悲鳴をあげながら、赤黒い霜になって消えた。
「「これが連携の力だ!」
出雲桃太の親友、呉陸喜こと黒騎士と、鉛色髪の巨漢青年、石貫満勒はハイタッチを決め、それぞれ天に拳をかかげながら咆哮する。
「俺様は、こいつらのような腐敗した勇者パーティをぶっつぶす。そして、今度こそ祖平遠亜を、俺様に惚れさせてみせる」
「五馬乂、燻っているのなら朽ちてゆけ。私は満勒と共に日本を変えて、トータの相棒の座を返してもらう」
「こ、この二人、なんか重いでち!」
満勒の愛刀たる鉄塊めいた〝鬼神具〟、妖刀ムラサマが、男二人の情熱的な宣言にツッコミを入れた直後……。
「「うわああああ。もうダメだ。俺たちの負けだ」」
満勒ら、冒険者パーティ〝G・C・H・O・〟の進行をこれまで阻んでいた、第四の要衝〝氷結地獄〟は、上司である祁寒鼠弘に裏切られたこともあり、遂に降伏を決めた。
「よし、このまま敵の拠点〝豹威館〟を落とすぞ」
「城の戦力はすべて打ち破った。もはや裸城も同然だ」
四つの要衝を突破した満勒達は、再び蒸気バイクにまたがり異界迷宮カクリヨの第八階層〝残火の洞窟〟を進軍。
日本国に反旗を翻したクーデター軍の本拠地、〝三連蛇城〟の北方を守る二つ目の砦、〝豹威館〟へと攻め上った。
「剛浚様、援軍を出してください」
「今の戦力ではとても戦えません」
城主を失った〝豹威館〟の残存兵達は、三連蛇城の本城、〝獰蛇城〟に籠る総大将、六辻剛浚に援軍を要請したが――。
「裏切り者がいるかも知れないから調査中だ。これ以上の増援はみとめない」
――無情にも却下された。
「くそ剛浚め、自分だけが可愛いのか」
「適当を言って、見捨てやがった」
「落ち目の組織ってのはやわいなあ」
「ええい、こうなったら降伏だ」
責任者たる祁寒鼠弘が既に戦死していたこともあり、彼の部下達は剛浚に見切りをつけて白旗をあげる。
かくして〝G・C・H・O・〟は、南の砦〝禁虎館〟に続き、北の砦〝豹威館〟の占領に成功した。
「ムラサマ、踊ろうぜ」
「戦勝の宴は、いつの時代も楽しいでちね」
満勒やムラサマ達が戦勝に喜び、輪になって踊る中、黒騎士は感慨深そうに座っていた。
「どうした」
「どこか怪我をしたでち?」
「いや、妹のことを考えていたんだ」
黒騎士は四鳴啓介との戦いのあと、桃太達が踊っていた光景を思い出していた。
「リウはトータに好意をもっているようだが、うまくやっているだろうか。サメの女の子は隙がありそうだからなんとかなるとして、矢上先生が強すぎるのが難点だ」
「恋愛も戦闘みたいなものでちからね」
「そ、そうなのか? やっぱり勝って認めさせるのが正しいんだな」
満勒はまたトンチンカンな解釈をしたようだが、不意に真顔になり黒騎士のヘルメットを覗き込んだ。
「だけどよ、黒騎士。妹が冒険者パーティ〝W・A〟にいるってことは、いずれ戦うこともあるんじゃないか」
「いや、妹だからこそ、正々堂々と腕を競うのが楽しみなのさ」
「黒騎士も〝G・C・H・O・〟にそまってきたでちね」
黒騎士はムラサマの評価に対し、首を縦に振った。
「そうかもな。お嬢さん、一曲踊ってくれるかい」
「もちろんでち。あたち、黒騎士なら結婚してあげても、なんか違うでちね」
「はは。残念、私もふられてしまったよ。な、満勒」
「俺様はまだ祖平に振られてないぞ」
「あきらめが悪いでちねえ」
満勒が見守る中、黒騎士はムラサマの手を取って踊り、戦勝の宴はおおいに盛り上がった。
あとがき
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