第446話 氷結魂鬼ネビロス
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「舞台蹂躙 役名変生――〝氷結魂鬼ネビロス〟! 役立たずどもはみんな死んじまえ」
テロリスト団体〝SAINTS〟の重要拠点、〝豹威館〟の城主たる指揮官、祁寒鼠弘は、黒騎士や石貫満勒ら冒険者パーティ〝G・C・H・O・〟の猛攻を受けて、自らを〝鬼神具・真正奥義書〟に食わせた。
鬼面をかぶり、翼の生えた巨大なネズミを連想させる悪鬼へ変貌した鼠弘は、口から氷結レーザーを放ち、目障りな存在を断罪した。
「ぎゃああ味方を撃つのか?」
「い、いやだ体がこおりにかわる」
「「ぐわあああ」」
そう、鼠弘は自らが築いた難攻不落の陣地〝氷雪地獄〟もろともに、部下であるはずの、〝SAINTS〟団員、数百人をも血の色の氷に変えてしまったのだ。
「全員散開!」
「前方の路面がまた凍結するぞ。飛行盾はすぐには壊れん。バイク隊は陰に隠れるんだ」
一方、冒険者パーティ〝G・C・H・O・〟の仲間達は、黒騎士が半壊したものの空を舞う全長三メートルの盾で射線をふさぎ、また全員が蒸気バイクに乗っていたこともあって、どうにかかわすことができた。
「おい、ペンギン。……じゃなくなったハネネズミヤロウ。ネビロスだかなんだか知らんが、今お前がぶっ殺したのは、仲間じゃなかったのか?」
「こんな役立たずが仲間であるものか。いつもそうだ。私が世を変えようと革命的な新商売を思いついた時もそうだった!」
「なに、新商売だと?」
好奇心旺盛な満勒は、鼠弘の嘆きを聞いて思わず食いついたが、直後に後悔することになる。
「キーッキキッ。そう、特別な資格も技能もなく、誰もが儲かる新商売よ。
私の〝鬼神具・真正奥義書〟より生み出す聖水を選ばれしもの――会員となった客――に売り渡し、〝その客が別の客を会員に勧誘して〟売る。
これを繰り返しながら、私が会員料を徴収することで、ピラミッド型の組織を形成するという画期的なビジネスだった。
だというのに仲間に裏切られて、私は前科がつき、組織は解散。借金を背負う羽目になったのだ」
一瞬、戦場が静かになった。
「こいつ、救いようのないアホだ」
「フホホ。バッカじゃのう」
大型バスに似た移動拠点、ホバーベースのハンドルを握る炉谷道子は怒りを示し、彼女を補佐する着物姿の老人、六辻久蔵は歯を剥き出しにして笑う。
「いやいや典型的なネズミ講、マルチ商法だろう。前科がついて当たり前、警察通報案件だ」
「そのやり方だと、アンタから始まって、毎日一人ずつ新しい会員になる客を見つけたとしても、二、四、八、一六、と倍になって、一〇日で会員が一〇〇〇人を超える。商品を売りつける相手がいなくなるって、聞いているだけでもわかるじゃねえか。お前、間抜けにもほどがあるだろ」
黒騎士が我慢できずにツッコミを入れ、満勒も矛盾を突きつけたが、鼠弘は憤慨するばかりだった。
「だまれだまれだまれ、この天才を否定するなあ!」
氷結魂鬼ネビロスとなった鼠弘は翼で上空を舞いながら、もはや廃墟となった陣地〝氷雪地獄〟に向けて、口から氷のレーザーを乱射する。
しかし、あまりに広範囲に狙いもつけずににばら撒いたため、先ほどの爆撃で設備跡を焼く炎と反応して、爆発的な水蒸気が生じた。
黒騎士は、その隙を見逃さない。
「戦闘機能選択、モード〝狩猟鬼〟戦闘続行!」
あとがき
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