第445話 要衝崩壊
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「舞台登場 役名宣言――〝覇者〟! やあってやるぜええ」
「満勒、まとめて音でたおすでちっ。これぞ妖刀のめんもくやくじょっ。〝鬼術・竜咆哮〟でちいっ」
「「ぎゃあああっ。耳が壊れるっ、頭が割れる」」
もはや蒸気バイクの運転を邪魔する障害はない。
冒険者パーティ〝G・C・H・O・〟を束ねる鉛色髪の巨漢青年、石貫満勒はハンドルを離してウィリー走行を決めつつ……。
彼の背におぶさる鉄塊めいた外見の妖刀ムラサマを大地に叩きつけ、螺旋を描く音波攻撃を放って、テロリスト団体〝SAINTS〟の雑兵達をドミノ倒しのようにまとめて無力化した。
「舞台登場 役名宣言――〝黒騎士〟! 雷の網、避けられるかな?」
「「ほげえええ」」
更に出雲桃太の親友、黒騎士も負けじと左目の赤い視覚素子を輝かせながら、蒸気バイクのエンジンをふかして飛び上がり……。
前方宙返りを披露しつつ、肩部ユニットから放った電磁網で、柿色のユニフォームを着た何十人もの敵集団を拘束する。
「「いやっふうっ、さっすがあ。俺たちもリーダーとエースにつづけえ!」」
「「ひいいい」」
「「BABAN!?」」
二人を追う〝G・C・H・O・〟団員達も歓声をあげながら弾丸のように飛び込んで、にっくき人身売買の犯罪者と、カンガルーめいた式鬼・野鉄炮を追い立てた。
「「ヒャッハァ。どけどけどけえ」」
「「うわああ。なんの備えもなしにバイクを止められるものか」」
実のところ、祁寒鼠弘がかき集めた戦力も、長きにわたり異界迷宮で戦ってきたベテラン揃いであり、決して弱くはなかった。
「怪我をしたくなければ降伏しろ」
「「うわああもうだめだ」」
しかし、ホバーベースの爆撃を受けたことで第四の要衝〝氷結地獄〟の特徴であった路面凍結が失われたばかりか、防衛設備の大半が壊れてしまい、もはや敗北不可避と白旗をあげるか、己が身一つで逃亡――。
「こ、こうなったらあの車両を奪うんだ。空と陸から攻撃すれば、なんとでもなる!」
「奪う、くすねる、かっさらう。俺たちはこうやって強くなったんだよ」
人身売買や人体実験といった悪事に加担した結果、二度とシャバには戻れない前科者や犯罪者に至っては、逆上してホバーベースを襲いかかる始末だった。
「フホホ。ワニュウドウで車輪端末を復活させるぞい」
「じゃあ、陸は死なない程度にひいて、空は生きのびられるといいですね」
「「お、オレ達を踏み台にしたあ!?」」
「「冷静に考えて、バイクに勝てない人間が、バスと喧嘩して勝てるかあ」」
しかしながら、久蔵が召喚したワニュウドウの複製車輪で、槍や斧を手にした陸上兵を踏みつけてジャンプ。
道子はツジカミの能力で補強した、植物の鎧をまとう大型バスめいた車体で体当たりして、ホウキや絨毯にのった航空兵をぶっ飛ばし、と……。
ヤケになった悪漢どもを、飛んで火に入る夏の虫とばかりに蹴散らした。
「えーい、雑魚どもはまるで役に立たない。こ、この勝利を皮切りに、あの愚かな総大将、六辻剛浚になりかわるはずだったのだ。敗北は認められない。かくなる上は我が同胞、〝鬼神具・真正奥義書〟よ、もういい。すべてを喰らえ!」
祁寒鼠弘は、鬼面となった古書をかぶるや、鬼の力を際限なく引き出して悪鬼へと変貌。
その姿はペンギンに似た人間状態が様変わりして、奇しくも名前通りに、翼の生えた巨大なネズミのようだった。
「舞台蹂躙 役名変生――〝氷結魂鬼ネビロス〟! 役立たずどもはみんな死んじまえ」
あとがき
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