第444話 こじ開けられたドア
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ライダースーツを着た美女、炉谷道子が空飛ぶホバーベースを操りながら飄々と事情を明かし、着物を羽織った老人、六辻久蔵が自慢げに勝ち誇ったのに対し、防寒具で着膨れした祁寒鼠弘は責任を他者に押し付けて食ってかかったものの……、たった今爆撃を受けているテロリスト団体〝SAINTS〟の団員達は、それどころではなかった。
「ひえええ。伏せろ。頭をまもるんだ」
「この重武装なら、当たりどころが悪くなければ死にはしない」
「BABAN!?」
長大な要衝〝氷結地獄〟を守るという任務から、ペンギンめいた格好の鼠弘だけにとどまらず、一般団員達も分厚い毛皮などのコートで武装しており、式鬼・野鉄炮も呪符の集合体であっため、爆風と飛散物にはなんとか耐えることができた。
「「あ、あつういいい」」
「「BA、BABAN!?」」
しかしながら、その後、柵や見張り台に着火した焔に炙られたため、冒険者が着こんだ厚着も、式鬼を構成する紙の肉体も完全に裏目に出て、めらめらと燃え始めてしまう。
「わ、私の陣地が、こんなやり方で、くそ、くそ、くそおお」
陣地の前線に出ていたことで、皮肉にも爆撃を免れた敵指揮官が、悔しさのあまりのたうちまわる中――。
「チョロいものでしたね。祁寒鼠弘。ところで、自分を織田信長に見立てる自意識過剰なチンピラさんは、彼の最期はご存知ですか?」
「本能寺を舞台にファイヤーフェスタっ、なんてな。つい、代わりに言ってしまったが、そもそも戦国時代のつもりだったのならお生憎様じゃのう。今が西暦何年だと思っている? 〝鬼の力〟が猛威を振るう魔境の時代じゃよ! フホホ、やっと言えてすっきりしたあ」
道子と久蔵は、抜群のコンビネーションで、日本国に反旗を翻したテロリスト団体〝SAINTS〟が築いた陣地、第四の要衝〝氷雪地獄〟を焼き払い、悠々とホバーベースを着地させた。
「さあ、邪魔な要衝〝氷雪要塞〟もこうなれば終わり。満勒君、黒騎士君、冒険者パーティ〝G・C・H・O・〟の凄さを見せるのは今です。バイク隊でやっちゃってください」
道子と久蔵の活躍を見て、鉛色髪の巨漢青年、石貫満勒や、副官的立場にいる少年、呉陸喜こと黒騎士達のやる気が跳ね上がる。
これまでバイク隊の進行を阻んできたタイヤをスリップさせる路面凍結も、有刺鉄線を張り巡らせた馬防柵も、爆撃によって跡形も残らぬほどに破壊され、異界迷宮カクリヨの第八階層〝残火の洞窟〟の荒野が広がっていた。
「舞台登場 役名宣言――〝覇者〟! やあってやるぜええ」
「満勒、まとめて音でたおすでちっ。これぞ妖刀のめんもくやくじょっ。〝鬼術・竜咆哮〟でちいっ」
「「ぎゃあああっ。耳が壊れるっ、頭が割れる」」
あとがき
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