第435話 黒騎士、危うし?
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「これこそは、我らが主人、六辻剛浚様が、七罪家の執事、晴峰道楽より召し上げた切り札中の切り札、〝式鬼・火竜〟だああ」
「GOOOOOOOO」
柿色のユニフォームに身を包んだテロリスト団体〝SAINTS〟のやけっぱちな声に応えるように、空飛ぶトカゲは炎の砲弾を吐き散らし、〝豹威館〟を守護する第三の要衝〝堕天使の楽園〟の各所に大穴を空けた。
「「うわああああ。よけろよけろ」」
攻め手である冒険者パーティ〝G・C・H・O・〟の蒸気バイク部隊も、このモンスターの猛攻にはたまらず、隊列を崩して逃げ惑う。
「な、なんて火力だっ。どうして今まで隠していたんだ?」
「こんなのあったなら、もっと先の砦で使えでち」
総大将である鉛色髪の巨漢青年、石貫満勒と、彼の愛刀が変身した日本人形めいた少女ムラサマは、あまりに不透明な運用に思わずツッコミを入れずにはいられなかった。
「バカめ。火竜は破壊力が強過ぎて、第一の要衝〝弓兵地獄〟や、第二の要衝〝要塞地獄〟で使ったら設備が壊れて大惨事なんだよ」
「ここは空戦用の空き地だから使えるんだ」
二人の指摘はまさかの正論によって、却下されたが――。
それはひとえに〝SAINTS〟の弱点を暴露したに等しい。
「「それってアンタ達もコントロールできてないってことじゃやいか!!」」
「「うるせええしねええ」」
空飛ぶ火竜は暴走するがままに、猛禽類に似た翼から呪符を舞きちらし、空中で爆発させる。
圧倒的な火勢は火柱となって荒地を焼き焦がし、地形すらも変えかねないほどだ。
「破壊力が高すぎる。ちい、バイク隊はホバーベースを守れ。こうなったら〝絶対勝利剣〟でぶった斬ってやる」
「ムチャ言うなでち。あんな大技を連発とか無理でちよ。そもそもどうやって近づくんでちか」
満勒と彼の愛刀、ムラサマが揉める中……。
出雲桃太の親友、呉陸喜こと、黒騎士が飛行機能のついた盾を背負ったまま、バイクで飛び出した。
「いいや、満勒大将、ここは私に任せてもらおう。舞台登場 役名宣言――〝黒騎士〟!」
黒騎士は声高く叫ぶ。
彼は身につけた〝鬼神具〟。すなわち、機械仕掛けの義腕と黒い蒸気鎧が、式鬼・火竜という強敵を前に、歓喜していることを感じ取っていた。
「戦闘機能選択、モード〝一目鬼〟――状況開始!」
黒騎士がかぶる鬼の仮面を模したヘルメットの右目に、槌の文様が描かれた強化センサー付きの眼帯が降りてくる。
黒騎士は、飛行盾の浮力でアシストしつつ、蒸気バイクのエンジンを全力稼働させて、火竜に対して真っ向勝負で突撃。
「うおおおおっ」
「GUOOO」
空飛ぶトカゲが振り下ろす爪をナイフで受け流しつつ、顔面にバイクを叩きつけた。
「GUOOO」
が、火竜もさるもの、口腔から放った炎の砲弾でバイクごと乗り手を蒸発させる。
「黒騎士いいいいっ!?」
「ぎゃははは。式鬼・火竜は無敵だあああ」
あとがき
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