第429話 満勒の新必殺技
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鉛色髪のマッチョな巨漢青年、石貫満勒はノーハンドルでバイクに仁王立ちして、本来の姿である鉄塊じみた妖刀に戻ったムラサマを担ぎあげる。
「舞台登場 役名宣言――〝覇者〟!」
満勒は役名を宣言すると同時に、幼い自分の彼らを海外に売った怨敵〝SAINTS〟の式鬼に怯える冒険者パーティ〝G・C・H・O・〟の仲間達へ向けて、猛獣を思わせる大声で激励した。
「野郎ども、俺様を見ろ。我が覇道の焔で、お前達をおびやかす宿命を焼き払う! 奥義開帳・〝絶対勝利斬〟!」
満勒はバイクの車上で身の丈よりも大きい剣をぶん回し、空中に炎に燃えるVの字を刻みつける。
「バカめ、貴様らのようなゴミが、エリートたる勇者パーティ〝SAINTS〟に叶うものかっ」
「ここには出雲桃太はいないし、砂の武器や盾を操るという名門、柳家の御息女もおらん。銃撃を防ぐすべはない」
「そうかい。こいつは、まさにその恋敵、出雲桃太と柳心紺をぶっ飛ばす為に編み出したんだよ
黒騎士は満勒の新必殺を観測し、舌を巻いた。
おそらくは、彼の師匠であるビキニアーマーの剣士セグンダの切り札からヒントを得たのだろう。
されど、セグンダの必殺技〝最終署名〟が、漢字の〝二〟あるいはアルファベットの〝Z〟を刻み、鬼神具から発する煙で限定範囲を斬る対人技なのに対し――。
満勒が披露した新必殺技、〝絶対勝利斬〟は、空中に焼き付けたV字の炎が急速に拡大する、いわば対空間技とでもいうべき広範囲技だった。
「「BABAN!?」」
満勒が生み出した炎は、イタチに似た式鬼・野鉄炮五〇体が吐き出す銃弾を雨を飲み干し、射手をも業火で焼き払う。
「炎が伝播して、全ての銃弾を飲み干しただとう!?」
「それだけじゃない。式鬼・野鉄炮が焼ける。やぐらが燃える。設置弓が壊される。なんなんだあれは!?」
「「BA……BAN……」」
満勒が恐怖の象徴だった式鬼もろとも弓兵地獄の一角を炎で包み、〝SAINTS〟団員達を恐怖で錯乱させる一方。
「さっすが、俺たちの大将。すげえええ」
「一生ついていきやす!」
冒険者パーティ〝G・C・H・O・〟のバイク隊員達は、総大将の頼れる背中を見てやる気を取り戻していた。
「か、カッコいいでち。こうでち、こういうのが妖刀でち!」
「俺様とムラサマだからできるのさ。この技ならどれだけ衝撃波を浴びせられようが、砂の武器に包囲されようが関係ない。まとめてぶっとばしてやるぜ」
「ぎゃあああ」
満勒が大剣となったムラサマを野球バットのようにぶんぶん振るうと、犯罪者たちはホームランボールのように吹っ飛んだ。
「ま、待て、俺たちはエリートだぼ。じょむと銃で撃っただけでごごまでされるいわれはない」
「トータであれば情けをかけるのだろうがな。エリートなんだ。たまには撃たれたり、ひかれたりする経験を学んでみるといい」
黒騎士らバイク団員達は、フロントガードに取り付けられたブレードで、第一の要衝、〝弓矢地獄〟を散々に破壊し、外道どもをひき倒した。
「いやっふうう、今こそトラとウマってやつを乗り越える時だ」
「ぎょええええ」
満勒達、冒険者パーティ〝G・C・H・O・〟は過去をのりこえ、式鬼・野鉄炮を撃破し、第一の要衝、〝弓矢地獄〟を突破した。
あとがき
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