第426話 〝G・C・H・O〟進撃す
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六辻剛浚が金でかき集めた手勢、悪人や犯罪者達もついでとばかりに手近な財産を奪って逃亡。
クーデター軍の戦力は、本拠地である異界迷宮カクリヨの第八階層〝残火の洞窟〟にある〝三連蛇城〟を除き、事実上壊滅した。
「剛浚は昔から規律もいい加減で、私財の没収もしょっちゅうだったのよ。あんな魔王の下でやっていられるか」
「クーデター軍の双首領の片割れである七罪業夢が捕まったのだ。次は驕り高ぶった六辻剛浚の番だ」
剛浚は元々欲深い性格ゆえに、〝SAINTS〟内部でも評判が悪かった。それを覆い隠していた六辻家当主の詠という神輿を失い、悪業が暴かれた今、彼の求心力は地の底へと転落する。
「今こそ魔王、六辻剛浚に挑むヒーローが必要だ」
こうしてたかぶった民意は、〝K・A・N〟に引き続き、六辻剛浚と〝SAINTS〟を倒すヒーローを渇望した。の、だが……。
「あ、あれ? 七罪家残党の一葉朱蘭達が姿を隠してからまだ一週間も経っていないのに、本拠地攻略戦みたくなっちゃったんだな。碩志君。ひょっとして、ボク達、やりすぎたんだ、な?」
「桃太さんは八岐大蛇、第七の首〝吸血竜ドラゴンヴァンプ〟戦でボロボロ。乂兄さんは利き手が骨折。焔学園二年一組の研修生達も戦い詰めで疲労困憊です。そもそも冒険者パーティ〝W・A〟は、先の戦いで全滅寸前まで追い込まれたんですよ。彼らにはクマ国内での任務に集中してもらうしかありません。今は手元の戦力で〝三連蛇城〟を包囲するにとどめましょう」
あまりにも早すぎる状況の変化は、この状況を作り上げた冒険者組合代表、獅子央孝恵と、勇者パーティ〝N・A・G・A〟の代表、五馬碩志にとっても計算外の効果を生み出した。
「満勒大将、チャンスだぞ。トータは異世界クマ国に出張中だ。名前を売るなら今だぞ!」
「ヒャッハァ! 師匠が言っていたタイミングが来たんだなっ。ムラサマ、黒騎士、攻めるぜええ」
鉛色髪の巨漢青年、石貫満勒は、六辻家とテロリスト団体〝SAINTS〟が犯した様々な罪状が明らかになり、四分五裂する状況を見て、冒険パーティ〝G・C・H・O・〟を率いて出陣を決断。
「わかったでち。さいきょーたる妖刀の力、証明してやるでち。クーデター軍が築いた三つの城、〝三連蛇城〟の一つ、南の〝禁虎館〟を取ってから、こぜりあいばかりで、あきていたところでち」
車庫へ向かう満勒に抱き上げられた〝鬼神具〟――日本人形めいた少女に化けた妖刀ムラサマも、両の手を高くあげて賛成した。
「そうとも、トータと冒険者パーティ〝W・A〟には負けていられないからな。まずは北の支城、〝豹威館〟を落とし、〝三連蛇城〟の本城、〝獰蛇城〟に王手をかけよう」
また出雲桃太の親友であり、いまや副官的立場にいる呉陸喜こと黒騎士も肩で風を切って満勒の隣に並んだ。
「道子さんと久蔵爺さんにも声をかける。野郎ども、合戦の時間だ!」
「「いえええい!」」
あとがき
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