第424話 獅子央孝恵、六辻剛浚の闇を暴く
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西暦二〇X二年八月下旬。
元勇者パーティ〝SAINTS〟の重鎮である六辻剛浚は、冒険者組合代表、獅子央孝恵が拡散した動画を見て絶叫した。
「六辻詠だと!? こんなことはありえない。よりにもよってあの箱入りニワトリ娘が我が野望を阻むのか?」
剛浚は、本来のトップである彼女を幽閉し、セグンダのような影武者を立てることで組織をほしいままにしていた。
「おのれ六辻詠。おのれ出雲桃太。おのれ獅子央孝恵。ガキどもが揃って我が野望の邪魔をする!」
しかし、本物の六辻詠は、家庭教師だった炉谷道子の手引きで囚われた屋敷から脱出。
自らの意思で最も新しい勇者と讃えられる出雲桃太と、冒険者パーティ〝W・A〟に助太刀して、〝SAINTS〟が同盟を結んでいる、クーデター軍の片翼たるテロリスト元勇者パーティ〝K・A・N〟と戦い、最古参の〝鬼勇者〟だった実力者、七罪業夢を捕縛した。
「クソガキの勝手な行動のせいで、このままでは、我々は日本政府と冒険者組合ばかりでなく、七罪家と〝K・A・N〟からも攻撃を受けるではないか。緘口令をしけ、絶対に握りつぶせ!」
剛浚は独裁者らしい強引な対応で、情報統制をはかったものの――。
「「動画に映る〝空王鬼ジズの羽〟こそ六辻家当主の証!」」
「「嘘つきの奸臣め!」」
詠の活躍を知った、元勇者パーティ、〝SAINTS〟の団員達がクーデター軍を率いる総大将、六辻剛浚へ向ける視線は疑念と不審に満ちていた。
「なにも切った張っただけが、戦いじゃないんだな。まだ学生の桃太君に前線をお願いしたんだ。微力なれども、この獅子央孝恵、大人としてやれることをやるんだな」
桃太の上司であり、冒険者育成学校の校長でもある獅子央孝恵は、六辻家が疑心暗鬼で行動不能となった隙を逃すことなく、情報戦を続行――。
「孝恵代表。乂兄さんが目立って人を惹きつける陽の忍者を目指すなら、ボクは闇を支配する影の忍者を目指します。そっちの方がカッコいいですからね。七罪家の次は六辻家を崩す。こういう地道な捜査は得意分野です、お任せあれ」
「「おす! まことの勇者パーティの活躍を世間に見せてやります!」」
桃太の相棒、五馬乂の弟である五馬碩志と、彼が代表を務める勇者パーティ〝N・A・G・A〟の団員を派遣。
大混乱に陥ったクーデター軍から、機密情報をごっそりと抜き去った。
「必ず痕跡があるはずなんだな。なぜなら、冒険者パーティ〝G・C・H・O〟の石貫満勒君やセグンダさんこそ、彼らが犯した非道の生き証人だからだ」
「反省して悪事を止める手合いでもないでしょうからね。……よし、ゲット!」
孝恵と碩志は二人三脚の活躍で、異界迷宮カクリヨ内部に隠されていた秘密拠点を見つけることに成功。クーデター軍の後ろ暗い悪業をあまさず世間に公開した。
「なんだこの資料はっ。亡くなった冒険者の遺族年金を詐欺で奪ったのか!?」
「この写真を見ろ。年端もいかない子供達をさらい、ヨーロッパで奴隷みたいに働かせているじゃないか!?」
「この動画に映っているのは、食肉工場? いや人間をバラバラにして実験しているのか!?」
あとがき
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