第420話 黒騎士、桃太の活躍を知る
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一葉朱蘭、離岸亜大、晴峰道楽の三人は、形成不利と見て闇にもぐる。
七罪家を再興するに足る実力者達が揃って姿を消したことは、日本政府と歩調を合わせてクーデター軍鎮圧の指揮をとる冒険者組合代表、獅子央孝恵にとって嬉しい誤算だった。
彼はぽよんぽよんとお腹を揺らして、〝鬼の力〟の悪影響を祓うダンスを練習しつつ、クーデター勢力を鎮圧すべく次の手を模索する。
「むむむ、警戒していた一葉の鬼女も、金狂いの陰謀家も、七罪の懐刀も動かない。これは六辻家を簒奪した剛浚を引きずり下ろし、実権を詠ちゃんにとり返すチャンスなんだ、なっ!」
西暦二〇X二年八月下旬。
出雲桃太が代表を務める冒険者パーティ〝W・A〟が、代表の七罪業夢を倒したことを皮切りに……。
冒険者組合代表、獅子央孝恵が抜擢した、東平孔偉、幸保商二といった別働隊の面々が、〝朱蘭ら三人を除く〟七罪家とテロリスト団体〝K・A・N〟の旧指導者層を逮捕し、壊滅させた。
「新しい勇者、出雲桃太と冒険者パーティ〝W・A〟が、また助けてくれたぞ!」
「「ありがとう!!」」
クーデター軍による銀行強盗や商店街への襲撃など、様々な暴挙に怯えていた世論は、この活躍を見て歓喜に包まれ快哉を叫んだ。
「あちゃあ。吾輩達、冒険者パーティ〝G・C・H・O〟は、クーデター軍の本拠地、〝三連蛇城〟のひとつ、〝禁虎館〟を落として先行していたはずが、あっという間に〝W・A〟に名声で追い抜かれちまったね」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太が冒険者パーティ〝W・A〟を結成して一ヶ月。
誕生したばかりにも関わらず、数々の武勲をあげた最も新しい勇者の話題は、日本中を席巻していた。
「他に頼る者がいない、獅子央の坊ちゃんが力添えしているのもあるだろうが……。桃太クンがいくらカムロの愛弟子といえ、まさか初陣でクーデター軍の二大巨頭のひとり、七罪業夢を討つとは思わなかったネ!」
クマ国の反政府組織〝前進同盟〟の統率者であり、同時に、冒険者パーティ〝G・C・H・O〟のスポンサーであるオウモは、状況の急速な変化についていけず、紫色の作務衣姿でホバーベースの一室で頭を抱えていた。
彼女の眼前にあるパソコンには、地球上で情報収集中の同志から送られてきた、〝桃太 対 吸血竜ドラゴンヴァンプ〟を録画した動画が映し出されている。
「快刀乱麻を断つような、竜の首を落とす決着の一撃。見事だ、トータ。それでこそ私のライバルだ」
「ヒャッハァッ。さすがは俺様の恋敵だぜ。鮮烈デビューでリードしたつもりだったが、簡単には勝たせてくれないか」
「黒騎士が出雲桃太をライバルというのはわかるでち。でも、満勒はまず意中の祖平遠亜からかけられた、ストーカー疑いをはらすところから始めるでち」
そして、同室では桃太の親友である呉陸喜こと黒騎士や、鉛色髪のマッチョ青年、石貫満勒。彼の〝鬼神具〟である日本人形に化けた少女、ムラサマも、ダンジョン内でも機械動作を可能とする特殊な結界の中で、パソコンからホワイトボードに投影された映像を見て、ああだこうだと盛り上がっていた。
あとがき
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