第414話 一触即発!?
414
「「カムロ様に対して何たる無礼かっ。許せん!!」」
カムロの護衛として付き従っていた異世界クマ国の戦士達は、主君に対し暴言を吐くばかりか喧嘩を売った、昆布のように艶のない黒髪の少女、伊吹賈南へ殺到した。
「カムロさん、待ってくれ。賈南さんは、口が悪いだけなんだ」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太は、焔学園二年一組の級友達への失言から、縄でぐるぐる巻きにされていたものの、賈南のピンチを見て飛び出そうとする。
「ニャホー(いけないわ。桃太君が出張ったら、余計にややこしくなるわよ」)
「クマ国の問題に出張っても、相棒が役に立つわけないだろう。ストップだ!」
されど桃太は拘束を引きちぎった直後、三毛猫に化けた少女、三縞凛音に足元を引っかけられ、カムロの養子である金髪少年、五馬乂のタックルを受け、うつ伏せに転んでしまう。
「うわっ、なにをするんだっ」
「そりゃあ、相棒を止めるんだよ。そーらよっと」
おまけに乂は、桃太の両腕を鳥の羽を広げるように引っ張って、絞り上げてしまったではないか?
「あいたたたたっ。乂、パロスペシャルは反則だろう!」
「シャシャシャ、相棒が相手だぜっ。全力を尽くす」
「ニャーッ(ワタシなんて未来を読み切ってなお、いっぱい食わされて負けたし)」
桃太と乂、凛音が言い争う間にも、賈南は屈強な戦士達に包囲されたが……。
「おおっ、妾ってば、囚われのヒロイン状態? 救出クエストならいつでも大歓迎じゃぞ、出雲桃太!」
「さすがに自重するサメー。ジイチャン、賈南ちゃんはそんなに悪い子じゃないんだサメー!」
正体が八岐大蛇のエージェントだけあって、カムロの養女である、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨に対し不敵な笑みで応じるなど、堂々とした態度を崩すことはなかった。
「カムロ様。子供の言うことだからね。勘弁してはくれないか」
「わたしの生徒が申し訳ありません。あとでちゃんと言い聞かせますので、どうかお許しください」
むしろ冒険者パーティ〝W・A〟に新たに参加した大人、呉栄彦と、クラスの担任教師である矢上遥花が顔を青くして飛び出し、弁明するほどだ。
「……矢上先生。明治維新の前にさあ、イギリス人が移動中の薩摩藩主の元へ突っ込んで、えらいことになった事件なかったっけ?」
「薩英戦争の引き金になった生麦事件ですね。あれは両国の文化と価値観の差異に加えて、言葉が通じなかったことが原因の一つとされていますが、今回は言葉が通じる分、もっとまずいです」
二人は小声で打ち合わせながら、冷や汗を流す。
クマ国にはいまだ中世的な価値観が残っているため、国家代表へ罵詈雑言を浴びせたならば、打ち首にされても文句は言えない。
なにより、いまや日本国に仇なすテロリストとはいえ、元八大勇者パーティの実力者として知られた七罪業夢が、クマ国に侵略行為を仕掛けたばかりだ。賈南の暴言がキッカケで、両国間で開戦すらあり得るのだ。
「ひょっとして、賈南さ……んは、地球日本と異世界クマ国の間で、戦争が起きることを望んでいるのかも」
あとがき
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