第412話 師弟再会
412
「出雲桃太です。カムロ様。冒険者組合代表、獅子央孝恵の親書を持ってきました」
「ありがとう。よくここまできてくれた」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太がうやうやしく親書を差し出すと、牛仮面をかぶった足の見えない男、カムロは丁寧に受け取った後、彼の手を握りしめて握手を交わした。
「そうだ、カムロさん。ヨシノの里がたいへんなことになっているんです」
「その件については、問題ない。元勇者パーティ〝K・A・N〟が不法侵入したことは承知しているよ。こうして僕が出る以上、クマ国に一度でも入り込んだ日本政府指定のテロリスト達は、三日以内に全員を拘束する」
星の照らす夜といえど、カムロの温度を感じられない断言に、桃太は背筋がぞくりと冷えた。
鴉天狗、河童、耳や尻尾に狐狸の特徴が残る様々な獣人……彼が引き連れてきたクマ国の戦力は、そのためにやってきたのだろう。
「桃太君。紗雨を、乂を、葉桜達をよく守ってくれた」
しかし、直後カムロの口調は一転し、キャンプ地のかがり火がてらす中、桃太の背を抱いて頭をわしゃわしゃと撫でた。
「「……おおおおおおっ」」
親愛を示す二人に、クマ国の戦士達が歓声をあげる。
「桃太君、我が弟子よ。強くなったね」
「はい、カムロさん。師匠!」
桃太と、カムロ。
地球と異世界クマ国の橋渡しとなる師弟は、およそ一年ぶりの再会を果たした。
「よーし、元気でてきた。みんなっ、このままクマ国までひとっ走りしようか」
桃太は、焚き火の前で待っていた冒険者パーティ〝W・A〟の仲間達の元へ手を振りながら舞い戻り、ウキウキと呼びかけたものの――。
「「今日は朝から晩まで三連戦だぞっ。ここから強行軍だなんて、無茶言うな!」」
「な、なにをするんだっ」
モヒカンの雄々しい男子生徒、林魚旋斧を筆頭とするメンバー総出で抑えつけられ、縄で縛ってぐるぐる巻きにされた。
「さ、紗雨ちゃん。トータおにいさまって、パーティの代表ですよね?」
山吹色の髪を三つ編みに結い、白い〝蒸気鎧〟を着た少女、呉陸羽は桃太と個人的な面識こそあったものの、元勇者パーティ〝S・E・I〟から移籍したばかりだったので、団員が代表を拘束するという、とんでもない光景に目をむいた。
「陸羽ちゃん、桃太おにーさんの冒険者パーティ〝W・A〟は、四鳴啓介が好き勝手をしていた元勇者パーティ〝S・E・I〟とは違うんだサメー。勝手なことをすると代表でも怒られるのが、安心できる組織なんだサメエ。ジイチャンもそう思わないサメエ?」
サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨は陸羽の質問に答えつつ、自身の養父であるカムロを牽制したが……。
「僕は代表とは名ばかりのお飾りだからね」
カムロは肩をすくめ、養娘の皮肉をあっさりと受け流した。
あとがき
お読みいただきありがとうございました。
ブックマークや励ましのコメント、お星様、いいねボタンなど、お気軽にいただけると幸いです(⌒▽⌒)





