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第411話 代表邂逅

411


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたら、地球日本からやってきた冒険者育成学校、焔学園ほむらがくえん二年一組の生徒達は、異世界クマ国の代表カムロの到着前にどうにかキャンプ地で整列した。が……。


「あばば。ま、まずい。飯を食ってる場合じゃなかった。わらわ、なんという不覚!」


 一人だけ、それどころではない少女がいた。

 すなわち、かつてクマ国を侵略したところ、見事に返り討ちにあった鬼の首魁しゅかい八岐大蛇やまたのおろち代理人エージェントである伊吹いぶき賈南かなんである。

 彼女は日の出から日没まで続いた、三連戦の消耗が激しかったからか――。

 

「バーベキュー料理があまりに美味しかったから、うっかりしていたではないか」


 あるいは空腹のあまり、料理に集中していたからか、宿敵たるカムロの存在を完全に忘却していた。

 賈南の動転ぶりは、急な上司の来訪でパニックを起こした鴉天狗からすてんぐ葉桜はざくら千隼ちはやの比ではなく、昆布のように艶のない黒髪を振り乱しながらシャベルを掴み、地面に人一人入れそうな穴をせっせと掘りはじめたほどだ。


「賈南さん、やめなさい。子供じゃないんですから、整列してください」

「いーやーじゃー。妾はあんなおっとろしい男に会いたくない。穴を掘って隠れるんじゃーっ」


 とはいえ、相手がすで目視できる距離に居る以上、今更隠れても間に合うはずがない。

 賈南は担任である栗色髪の女教師、矢上やがみ遥花はるかに首根っこを掴まれてしまう。


「おー、たー、すー、けー。遥花は知らんから、そんな涼しい顔をする。一千年前、妾の先々……代が、奴の妻が作った手料理をつまみ食いしたところ、あの出雲桃太のマズメシに勝るとも劣らぬ破壊力で、配下共々軍勢が壊滅する大打撃を受けたんじゃぞ!」

「話を盛りすぎです。桃太くんの料理は、紗雨さあめちゃんが工夫すれば食べられますし、カムロ様、いえ初代スサノオの奥様はもう亡くなられてますよ。そもそも盗み食いなんてしなければ良かったんです」


 賈南はジダバタとあがいたものの、遥花の豊かな胸の中に抱き留められるようにして、生徒達の中へ運ばれてしまった。


「ビーレイト(おせえよ)……。クソジジイめ。相棒が何もかも終わらせてから来やがった。どうせ来るならもっと早く来いってんだ」

「さっきの戦いで桃太君が使った必殺技、生太刀いくたち、いえ〝生弓矢いくゆみや草薙くさなぎ〟のおかげで、居場所が把握されたんでしょ? ワタシ達は、七罪の部下達を見ておきましょう」


 またカムロの保護下にある金髪少年、五馬いつまがいと、三毛猫に化けた少女、三縞みしま凛音りんねは、賈南の騒ぎに乗じて物陰に隠れ……、ちゃっかり連絡用の式鬼を準備しはじめた〝K・A・Nキネティック・アーマード・ネットワーク〟の団員達を見張っていた。

 そうこうしているうちに、あたかも時代劇の一幕のように太鼓がドンと叩かれる。


「クマ国代表、カムロ様のおなぁりいっ」


 異世界クマ国の戦士達が到着を告げると同時に、牛を模した仮面をかぶる幽霊、カムロが馬から大地に降りたった。


「冒険者パーティ〝W・Aワイルド・アドベンチャラーズ〟代表の、出雲桃太君だね」


 カムロは幽霊らしく足が見えないため、焔学園二年一組の生徒達は一瞬どよめいたが、桃太は勝手知ったる相手とばかり、気にせず歩み寄った。


「はい、出雲桃太です。カムロ様。冒険者組合代表、獅子央孝恵ししおうたかよしの親書を持ってきました」

「ありがとう。よくここまできてくれた」


 桃太がうやうやしく差し出した親書を受け取った後、カムロは彼の手を握りしめて握手を交わした。

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] >奴の妻が作った手料理 大量の平行世界から 獣娘達「「TANUUU!MAUUU!」」 姫将達「「さぁ、まずは腹ごしらえだ!」」
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