第410話 別働隊二人との合流
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︎ 「「出雲の親友の妹だって!?」」
白い蒸気鎧を着た山吹色髪の少女、呉陸羽の予期せぬ登場に、額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太を除く全員が混乱する中――。
「出雲リーダー。それに焔学園二年一組の皆。私とその娘は敵じゃなくて、同じ冒険者パーティ〝W・A〟の別働隊だ。リウ、勝手に先行するんじゃない」
顎に無精髭を生やし、腰には地球のウィスキー瓶を縛りつけたベテランらしい冒険者が、異界迷宮カクリヨの第九階層〝木の子の谷〟の奥から、かがり火に照らされたキャンプ地へとやってきたのだ。
「トータおにいさま。あの人はウチの身元引受人の呉栄彦さんです」
「ああっ。リッキーから名前を聞いた気がする」
桃太は、陸羽を腕の中に抱きよせながら、彼女の兄である親友とファストフード店でポテトとコーラをつまんだ過去を思い起こした。
「出雲桃太です。陸羽ちゃんには仲良くしていただいてます」
桃太が軽く会釈すると、栄彦は深々と頭を下げた。
「出雲リーダー。無事で良かった。積もる話はあるが、ともかく合流できてよかった。リウと一緒にかがり火の前へ来て欲しい。もうすぐ、クマ国代表がお越しになられるんだ」
「え、カムロさんが来るんですか?」
桃太は、冒険者パーティ〝W・A〟の別働隊員を自称する、ベテラン冒険者に誘われて、火の灯りが照らし出すキャンプの中心へ走り出した。
「そんなっ。カムロ様がいらっしゃるなんて、早すぎるっ。皆様、整列をお願いします」
前髪の長い鴉天狗、葉桜千隼と、彼女が率いる防諜部隊ヤタガラスの隊員達もまた、自国の代表が来ると聞き、大慌てで出迎えの準備を始める。
「焚き火の側は食事で汚しちゃったから、少し離れて……」
「葉桜さん、俺たちどうすればいい?」
桃太達は手伝おうと進み出たものの、千隼は唐突な国家代表の来訪を聞いて、半ばパニックになっていた。
「こちらをざっと掃除して並んでください。カムロ様は、普通ならば会見前に使者を送るはずなんです。それを省略したということは、なんらかの異常事態が起こったということです!」
「シャシャシャ……。そりゃヨシノの里がのっ取られて、一部といえ防諜部隊ヤタガラスが暴走したんだから、異常事態だろ」
「ああ、ああーっ。私たちのせいだ。セップク、セップクしなきゃ」
「ニャーっ(乂、このおばかっ)」
金髪の不良少年、五馬乂が余計なチャチャを入れたり、三毛猫に化けた少女、三縞凛音がたしなめたりとドタバタしている間に、闇に包まれた谷の奥から、牛の仮面をかぶった初老の男が馬に乗り、大勢の戦士達と共にキャンプ地に近づいてくるのが見えた。
「遠亜っち、あの仮面をかぶった人が紗雨ちゃんのお父さん? それとも、おじいさんかな?」
「遠目から見てもすごく雰囲気があるね。怖いくらい」
「BUNOO!」
サイドポニーの目立つ少女、柳心紺や、瓶底メガネをかけた白衣の少女、祖平遠亜ら、焔学園二年一組の生徒達は、カムロの到着前にどうにか整列した。が……。
「あばば。ま、まずい。飯を食ってる場合じゃなかった。妾、なんという不覚!」
あとがき
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