第409話 呉陸羽ふたたび
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「侵入者だって? おいおい、郅屋。あんな若い子、〝K・A・N〟にいたか? うちの団員は、もっとこう年齢層高めだったろう」
白い蒸気鎧を着た襲撃者に対し、現在はテロリストに堕ちた元勇者パーティ〝K・A・N〟の捕虜、策井靖貧は乱杭歯を剥き出しにして懐疑の声をあげた。
「索井、悲しくなるようなこと言わないでください。確かにあの子、いやあの娘は若すぎるし、うちの蒸気鎧は赤で統一していますからね」
まるまるとしたもう一人の幹部、郅屋豊輔が言及したように、桃太達が一戦交えた〝夜狩鬼士〟部隊が身につけていた蒸気鎧は、血を連想させる赤い色で塗装されていた。
「じゃ、やっぱり我々〝K・A・N〟とは無関係か?」
「最近、世間を騒がせている地球の亡国民が集まったという過激派、〝前進同盟〟あたりの鉄砲玉じゃないですか? 業夢様を守りつつ、冒険者パーティ〝W・A〟に協力しますよ」
痩せっぽちの索井靖貧に並び、体格の丸い郅屋豊輔らも、命の恩人である冒険者パーティ〝W・A〟を守ろうと〝影の使役術〟で剣や槍といった武器を作って、襲撃者を捕縛せんと間合いを詰める。
アリ一匹逃さない厳重な包囲網が敷かれる中、無謀な突撃を企てた少女は意外な行動に出た。
「あにさま。いえ、トータおにいさま、やっと逢えたっ」
桃太を前に飛び出すと、感極まったような歓喜の声をあげたのである。
「この声は、リウちゃんかっ。みんな、待ってくれ!」
そして、狙われているかのように見えた、額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太もまた、少女を庇うように大きく腕を広げたのだ。
「この子は俺の親友の妹で、呉陸羽ちゃんだ」
「はい。ウチは、以前、皆さんに助けていただいた、呉陸羽です」
桃太が叫ぶや否や、山吹色の髪を三つ編みに結った小柄な少女は彼の胸に飛び込んだ。
「トータおにいさま、ウチはずっと逢いたくて、追いかけてきたんだよ」
「俺もリウちゃんに逢いたかったよ」
周囲が事態を飲み込まずに唖然とする中、桃太は陸羽を抱き寄せて、まるでダンスでも踊るようにくるくる回る。
「リウちゃんら、元勇者パーティ〝S・E・I〟との戦いの後、警察に保護されたって聞いたけど、どうやってここに来たんだい?」
「獅子央孝恵校長にお願いして冒険者パーティ〝W・A〟に参加したの」
そんな仲睦まじい二人を、サメの着ぐるみをかぶった、銀髪碧眼の少女、建速紗雨や、前髪の長い鴉天狗の少女、葉桜千隼は驚きの目で見つめていた。
「サメーっ!? 敵じゃないけど、恋敵が帰ってきちゃったサメ。妹分の座は渡せない、あれ、妹分の座だったら、渡しちゃっていいのかサメエ?」
「リウさんって桃太さんの妹さんなのですか? でも、苗字も顔も違うような。私はどうすれば!?」
「「出雲の親友の妹だって!?」」
あとがき
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