第408話 四度目の戦い?
408
昆布のように艶のない黒髪の少女、伊吹賈南が調理器具を器用に振り回して、手早く調理すると――。
「コケーっ。香ばしくていい匂いですわ。お腹がくうくう鳴りますわ。うまーい」
赤いお団子髪の目立つ少女、六辻詠が皿をつまみ、ジャージを押し上げる大きな胸を揺らしながら歓声をあげた。
「「おいしーい」」
朝から戦い通しだったこともあり、香ばしい匂いに空腹を刺激されたのだろう。
他のクラスメイト達も料理を一口食べようと、缶詰の持ち主である林魚旋斧と巧みなフライパンさばきを見せる賈南の元へ殺到する。
「賈南さん。詠さん、ほどほどにしないとまた太っちゃうよ」
瓶底メガネをかけた白衣の少女、祖平遠亜が制止したものの……。
「遠亜っちも、たまにはハメを外そうよ。ほらデュエットしよう!」
「BUNOO!」
虎に似た式鬼ブンオーを連れた彼女の親友、柳心紺が言いくるめたことでブレーキ役がいなくなり、祝いの宴は更に盛り上がった。
「ぼくも参加しますよ」
「フッ、美声をみせてやる」
小柄ながら活発そうな横顔の少年、関中利雄、七三分けの神経質そうな少年、羅生正之、といった焔学園二年一組のクラスメイトも、つられる手拍子を叩きながら曲に合わせて歌い出す。
「「アハハ、イェーイ」」
こうして、冒険者パーティ〝W・A〟と葉桜隊は、食事、歌、踊りをめいいっぱいに楽しんだ。
「おいガキどもっ。谷の奥から何かがくる。注意しろ!」
「「なんだって!?」」
故に、周囲を警戒する見張りを担当してくれた、元勇者パーティ〝K・A・N〟の冒険者が警告を発した時、初動が遅れた。
「見つけた!」
「え?」
焚き火が照らす広場の中心額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太を目がけ――。
背中にオルガンパイプのような排気口が着いた白い〝蒸気鎧〟を着た何者かぎ、あたかも夜闇を裂く流星のように一直線に飛び込んできたのだ。
「パワードスーツ!? 皆さん、警戒をっ。迎撃準備をお願いしますっ」
「ま、また敵襲サメエ?」
焔学園二年一組の担任教師、矢上遥花が不意の闖入に即応して命令を発するや、サメの着ぐるみを被る銀髪碧眼の少女、建速紗雨を中心に集まった生徒達はすぐさま戦闘態勢に入った。
「ひええっ、遠亜っち。これで四度目だよ」
「そうね、心紺ちゃん。ここまで続くと、誰かが後ろで策を練っていたのかも?」
「考えすぎじゃないか? 事情を知らない〝K・A・N〟の別働隊か何かだろ。楽しい宴を邪魔するなんて許せない。盛大にぶっ飛ばしてやる」
遠亜や心紺、林魚をはじめとする生徒達は宴を邪魔されたことで、闘志に溢れていた。
「皆さん、紗雨姫と桃太さんを守ります」
「葉桜隊長に続け、今度こそヤタガラス隊の使命を果たすぞ!」
また黒コートに身を包む、前髪の長いスレンダーな鴉天狗の少女、葉桜千隼を隊長とする、異世界クマ国の防諜部隊ヤタガラスの小隊員達も名誉挽回とばかりに、修復した錫杖を手に奮起する。
「侵入者だって? おいおい、郅屋。あんな若い子、〝K・A・N〟にいたか? うちの団員は、もっとこう年齢層高めだったろう」
あとがき
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