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第402話 カムロの出陣

402


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲いずも桃太とうたが、新たに編み出した必殺技、〝生弓矢いくゆみや草薙くさなぎ〟で、八岐大蛇・第七の首、吸血竜ドラゴンヴァンプを調伏ちょうぷくし、運命を切りひらいた決着の直前。

 異世界クマ国、ヨシノの里では、紫色に染まる空を、巨大彗星きょだいすいせいのごとく天を裂く一条の閃光が通り過ぎた。


「地球から異界迷宮カクリヨへ伸びる光……。そうか。獅子央ししおうほむらすらも袖にした〝あの鏡〟が、桃太君を認めたか」


 クマ国の代表である、牛仮面を被った男カムロは、幽霊なので見えない足で城郭の見張り台に立ち、見覚えのある光を見送って、感慨深く息を吐いた。


ほむらが危険から遠ざけようとした息子、獅子央ししおう孝恵たかよしは、父親が出来なかったことをやっている。僕も叶うならば桃太君に……」


 カムロの独白は、防諜部隊ヤタガラス隊長の、黒い翼を持つ鳥人アカツキがふわりと降り立ったことで中断された。


「カムロ様。本物のヨシノの里長、猪笹いのささたたら氏を救出。隠れていた七罪家の関係者とテロリスト団体〝K・A・Nキネティック・アーマード・ネットワーク〟の団員達を捕縛しました」

「良かった。生きていてくれたか」


 カムロは、心配していた部下の生存を知って、ほっと胸を撫で下ろした。城郭の上から眼下を見下ろすと、クマ国の軍勢が続々と集まっている。

 

「またヒメジの里のコウエン将軍をはじめ、他の里の指導者からも〝最長、三日の留守を支持する〟との連絡が届きました。我らが世界による御身への拘束も、しばらく緩むことでしょう」

 

 カムロは、アカツキが差し出した通信用の式神の束を見て鷹揚おうように頷いた。

 

「守護者という役割上、クマ国を長期間留守にできないのは仕方ないが、不便なものだ」


 カムロは、異世界クマ国を守るための幽霊だ。故に、その役割を外れて異なる世界で長居すれば、消滅する危険があった。


「この身がクマ国に縛りつけられていなければ、八岐大蛇も、オウモの馬鹿もぶん殴りに行けるのに」


 もしもカムロの隣にいたのが、乂や紗雨ならば、「そうやってジジイがなにもかもやろうとするから、クマ国は成長できないんだ(サメエ)」と即座にツッコミを入れたことだろう。

 しかし、アカツキは乱を未然に防げなかったことから、恐縮するばかりだった。


「御身の代わりに、手足となるのが防諜部隊ヤタガラスです。申し訳ありません。私も、葉桜はざくら千隼ちはやも、力不足だったようです」

「いや、アカツキも葉桜隊も頑張ってくれたよ」


 カムロはアカツキに対し、重々しく首を横に振り、地球からやってきた光が飛んでいった先、異界迷宮カクリヨの第九階層〝木の子の谷〟に繋がる〝次元の裂け目(ワープゲート)〟を見つめた。


「カミムスビ……普段はアテにならない〝クマ国の女神様〟が動くほどに、敵の手腕が悪辣あくらつだったんだ。おかげでようやく居場所を把握できた。宿に逗留中とうりゅうちゅうの冒険者パーティ〝W・Aワイルド・アドベンチャラーズ〟の別働隊。あの二人にも声をかけてくれ。僕の力で直接、ヨシノの里から〝次元の裂け目(ワープゲート)〟を開く。桃太君に会いに行こう」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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[一言] >普段はアテにならない〝クマ国の女神様〟 クマ国の女神様「酷い(ぷんすか)。こうなったらスサノオの逸話をいろいろ広めちゃうから」
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