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第398話 パズルのピース

398


「桃太くん、わたしの〝夜叉ヤクシニーの羽衣〟を使ってください。〝神鳴鬼かみなりのおにケラウノス〟や、八岐大蛇・第四の首、ドラゴンゾンビと戦った時に使った手袋の……、〝日緋色孔雀ひひいろくじゃく〟の代わりになるはずです」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲いずも桃太とうたは、担任教師である矢上やがみ遥花はるかの温かな体をかき抱き、栗色の髪の飾る赤いリボンを受け取った時、油の切れたブリキ人形のように冷え切っていた自らの心に確かな熱を感じた。


(遥花先生の肩が震えている)


 二〇〇体のドラゴンに責め苛まれた彼女のスーツは半ば裂けて、薄桃色の下着と、白い肌があらわになっていた。

 こんなにボロボロになっても、桃太を守るため、自らの武器を届けに来てくれたのだ。


「出雲桃太よ。わらわはお主との決別の時まで大蛇の力を使わぬと決めた。だから、この程度の苦難に屈してくれるなよ」


 遥花を送り届けた伊吹いぶき賈南かなんもまた、全身泥にまみれ、ジャージのそこかしこが裂けて、やたら大人っぽい装飾のキャミソールや、ガーターベルトがほのみえていた。

 恩師に比べれば凹凸の少ない身体だったが、汗に濡れた昆布のように艶のない黒髪を手ぐしでまとめながら、照れたようにそっぽを向くうなじは、ひどく蠱惑的こわくてきだった。


「相手は二〇〇体のドラゴンだ。確かにピンチだが、妾を一度は追い詰めた元勇者パーティ〝C・H・Oサイバー・ヒーロー・オーガニゼーション〟の鷹舟俊忠たかふねとしただをはじめ、これまで多くの強敵に打ち勝ってきたお前なら、きっと覆すことができると信じているぞ」

「鷹舟さんは道を誤りましたが、最期は凛音りんねさんをむしばんでいた〝鬼の力〟を奪って、未来を託したのでしたね」


 桃太は賈南と遥花の会話を聞いて、かつての自分のクラスメイトの仇であり、乂の家族を殺めた最初の宿敵、鷹舟たかふね俊忠としただの顔を思い浮かべた。


『凛音。わしの〝鬼神具きしんぐ〟のいわれを覚えているか? 茨木童子いばらきどうじは、世にも名高き豪傑ごうけつ渡辺わたなべのつなと戦い、腕を奪われるも、七日七夜の闘争の果てに奪い返したという。――鬼剣・〝七夜太刀セブン・ナイツ〟。我が必殺剣の真価は、〝鬼の力〟を吸い取ることにある!」


 桃太達の決戦を経て、老いたる冒険者は機械仕掛けの両腕を喪失した。

 しかし、……、〝C・H・Oサイバー・ヒーロー・オーガニゼーション〟を私欲の為に歪ませた黒幕、黒山犬斗くろやまけんとが、彼が我が子のように愛した三縞凛音みしまりんねを炎猫鬼アイムに変生へんじょうさせた時、恐れることなく死地へと飛び込んだ。


『俺サマの一生は嘘と偽りに満ちていたが、唯一つの真実だけは、決して鬼にくれてやらん!』


 そうして、鷹舟は〝炎猫鬼アイム〟の力を奪い、失われた腕をつくりあげ、鬼の中に囚われていた凛音を救い出したのだ。


「ああ、そうか。自分だけの力で足りないならば、敵の力を使えば良かったんだ」


 桃太は、勝利へ続く青絵図に欠けていたピースがカチリとはまったことを実感した。


「遥花先生、賈南さん、わかりました。俺が参考にするべき技は、鷹舟俊忠の鬼剣・〝七夜太刀セブン・ナイツ〟だった。技そのものは使えなくとも、〝螺子回転刃(カシナート)〟を使えば似た効果を模倣できるはずだ」

あとがき

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[一言] >俺が参考にするべき技は、鷹舟俊忠の鬼剣・〝七夜太刀〟だった 鷹舟「技を真似するのは認めてやるが、凛音はやらんぞ!」
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