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第397話 旅路で得たもの

397


「さあて、首をはねても心臓を穿うがっても駄目。〝忍者にんじゃ〟にも〝行者ぎょうじゃ〟にも変身できない。おまけに相手は二〇〇体ときた。いったいどうやって紗雨さあめちゃん達を救出するか?」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲いずも桃太とうたは、山際に沈みゆく夕陽を背に、朝からの連戦で疲労困憊ひろうこんぱいの体を動かして回避に専念。

 全長五メートルの空飛ぶ爬虫類、吸血竜ドラゴンヴァンプの群れが、ゲル状の血液を変化させて振るう斧や錫杖、ドリルといった攻撃を避けながら、反撃手段を探し求める。


「「「GAAAAA」」」


 日本国に対しクーデターを引き起こし、異世界クマ国の占領を目論んだテロリスト七罪業夢ななつみぎょうむの肉体を核に顕現けんげんした八岐大蛇・第七の首たるドラゴンヴァンプは、冒険者パーティ〝W・Aワイルド・アドベンチャラーズ〟、世界クマ国の防諜部隊ヤタガラスの小隊、果ては業夢の部下である元勇者パーティ〝K・A・Nキネティック・アーマード・ネットワーク〟を飲み込んで、およそ二〇〇体に増殖しており、取り込んだ彼や彼女の得意技まで学習していた。


「〝生太刀いくたち草薙くさなぎ〟が使えない以上、取れる手札は多くない。谷の地形を利用して、広範囲攻撃技の〝螺子回転刃(カシナート)〟を使えばなんとかやれるか?」


 なにせドラゴンヴァンプは、数が多すぎる上に、半端なダメージを与えても全回復するため、一発で致命的なダメージを与えて、〝核として囚われた仲間達〟を救出する必要があった。

 されど、今の桃太にはそれが可能な方策が思いつかない。なにかあるのかも知れないが、パズルのピースが抜けたように形にならないのだ。


「そもそも二〇〇体が相手じゃ、出力不足なんだよなあ」

『桃太君、カムロはキミを高く評価していた。大蛇の首といえど、戦えるだけの修行はつけたはずだ。〝生太刀いくたち草薙くさなぎ〟は、今のやり方だけが唯一無二の手段だと、そう思うかい?』


 桃太は、自らが握る短剣に宿る意思である八岐大蛇・第五の首、隠遁竜いんとんりゅうファフニールから奇妙なアドバイスを受けて困惑した。


「ファフ兄さん。啓介さんを倒すのに使った、〝草薙くさなぎ砲車雲もとくも〟のことですか? あれは〝生太刀・草薙〟の応用です。消耗の激しい今は、使えませんよ」


 桃太が、半径二メートル内に敵味方識別が可能な精密攻撃を仕掛けるのが、通常の〝生太刀・草薙〟で――。

 衝撃操作を放棄して、直線上に破壊の渦を解き放つのが〝草薙くさなぎ砲車雲もとくも〟だ。

 名前と効果は若干違うものの、本質は同じ。片方を使えば、もう片方も使えなくなる。


『力は貸せないが、ヒントは出そう。キミの相棒、五馬いつまがい君の、必要とあればためらわずに三縞みしま凛音りんねちゃんの力を借り、宿敵と決めたセグンダの技すら模倣するハングリー精神を見習うべきだ。キミ一人で戦っているのじゃないことを思い出せ』


 ファフ兄に指摘されて、桃太はハッとした。


「桃太くんっ」

「まったく、八岐大蛇のエージェントたる妾を足代わりに使いおって……」


 大蛇に飲まれたおよそ二〇〇人の中で、ただ二人残された仲間。

 担任教師の矢上やがみ遥花はるかと、クラスメイトの伊吹いぶき賈南かなんが、竜の群れの攻撃をかいくぐり合流に成功したのだ。


「遥花先生、賈南さん!」


 桃太が手を伸ばし、栗色髪の女教師を抱き寄せると、彼女は、自身の〝鬼神具〟であるリボンを手渡した。


「桃太くん、わたしの〝夜叉ヤクシニーの羽衣〟を使ってください。〝神鳴鬼かみなりのおにケラウノス〟や、八岐大蛇・第四の首、ドラゴンゾンビと戦った時に使った手袋の……、〝日緋色孔雀ひひいろくじゃく〟の代わりになるはずです」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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[一言] >八岐大蛇のエージェントたる妾を足代わりに使いおって 賈南「当然対価はいただくぞ。さぁ、この書類にサインを!(桃太に婚姻届けを突き付けながら)」
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