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第392話 吸血鬼に血を吸われた者は?

392


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲いずも桃太とうたは短剣内から聞こえる、八岐大蛇・第五の首、隠遁竜いんとんりゅうファフニールの言葉に頷き、テロリストに堕ちた元勇者、七罪業夢ななつみぎょうむを喰らって現れた八岐大蛇やまたのおろち・第七の首、吸血竜ドラゴンヴァンプめがけて突っ込んだ。


「我流・鎧徹よろいとおし。これでどうだああ」

「GAAAAAA!?」


 桃太は、ドラゴンヴァンプの胸元に短剣をつきたて上半身まるごと吹っ飛ばした。


「あとは、業夢さんを引っ張り出すだけ!」


 桃太は竜の腹ワタの内部へ組み込まれた老人へ手を伸ばすが――。


『ククク。そうすると思っていたとも、出雲いずも桃太とうた


 まさにその瞬間。

 吸血竜ドラゴンヴァンプを生み出した黒幕、八岐大蛇エージェントたる一〇〇の顔を持つ少年、八闇はちくら越斗えつとが干渉――!


『七罪業夢を吸血竜ドラゴンヴァンプの弱点と見抜きながら、殺さずに助けようとする。そのヘドが出るような甘さこそがお前を殺すための隙になる。今だ、切り札を使え!』


「GAAAAAAAA!!!!」


 全長五メートルに及ぶ巨竜はドロリと溶けて自らの肉体を赤黒い霜に変化させるや、谷の一角を飲み込むほどの規模で爆発し、あたかも雨を降らすように四方八方に散らしたではないか?


「え?」


 まさかの自爆めいた最期に、業夢を救出しようとした桃太も動揺を隠せない。


『まずいっ、これが目的だったのか。桃太君。我流・長巻で切って前へゆけ!』

「は、はい」


 桃太はファフ兄のアドバイスで、冷たい血の雨を突っ切り――。


「ちくしょうめ、ハメられた。矢上やがみ遥花はるか、すまん。ここでお前を失うわけにいかん!」

伊吹いぶきさん、何をするのですかっ?」


 八岐大蛇のエージェントの一人である、伊吹いぶき賈南かなんは、直感で危機を感じとるや、焔学園二年一組の担任教師、矢上やがみ遥花はるかの豊かな胸を背後から鷲掴わしづかみにしながら、自ら設置してあった爆発罠を踏んで吹っ飛ぶ。


「おーっ、出雲が竜を倒したぞ」

「やったね」

「これで戦いも終わる!」

「BUNOO!」

「業夢様の墓前に報告できそうだ」


 しかし、冒険者パーティ〝W・Aワイルド・アドベンチャラーズ〟も、異世界クマ国の防諜部隊ヤタガラスも、元勇者パーティ〝K・A・Nキネティック・アーマード・ネットワーク〟の団員達も、桃太が吸血竜ドラゴンヴァンプを倒したとしか思わなかった。

 喜びに湧く彼らへ霜となった赤黒い血液が降り注ぎ、粘液のように包み込んだ。


「ワッツア・ディザスター(なんてこったい)!?」

「サメー、いんちきサメー」

「さ、紗雨姫っ。うわああ」

「親分の仇も討てずにいい」


 五馬いつまがいが合流した、建速紗雨ら焔学園二年一組の生徒達五〇人と、葉桜千隼率いる鴉天狗五〇人、業夢の部下である索井靖貧らおよそ一〇〇人は吸血竜ドラゴンヴァンプが変じた赤黒い霜の粘液に取り込まれてしまった。


「GAA!」

「GAAA!」

「GAAAA!」


 そうして生贄となった彼や彼女達の血とエネルギーを吸ったゲル状の血液は、無傷のドラゴンとなって復活しするばかりか、およそ二〇〇体に増えていた。

 吸血竜ドラゴンヴァンプのあまりに理不尽な回復手段と増殖という惨劇に、桃太は衝撃のあまり膝をついた。


「なんでだよ。確かに倒したのに、紗雨ちゃん達を飲み込んで増えるだなんて、いくらなんでもおかしいだろう」


あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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[一言] スライム娘「大丈夫よ!この芸術品を鑑賞して心が現れれば人間になれるわ!過去に実証済みよ!(対ネオジェネシス用オブジェクト)」
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