第391話 桃太、吸血竜の弱点を見抜く?
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「業夢さんが使っていた輸血パックはないんだ。吸血竜ドラゴンヴァンプだって無制限に力を使えるわけじゃない。ファフ兄さんの助力もあるし、あと少しで倒せるはずだ」
『そう、だといいけどね。アイツの元になっただろう、一千年前の竜に覚えがあるけど、極めて頑健だったからなあ。楽観は禁物だよ』
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太は黄金色に輝く短剣の中にいる、八岐大蛇・第五の首、隠遁竜ファフニールの力を借りて、足に衝撃波をまとわせて速度をあげ――。
地球日本でクーデターを起こし、異世界クマ国の占領を目論んだテロリスト、七罪業夢を生贄に顕現した、八岐大蛇・第七の首、吸血竜ドラゴンヴァンプの爆撃を辛くも潜り抜けた。
「桃太おにーさん、手伝うサメエエ」
「〝砂丘〟展開。モード〝剣牙〟。飛んでいるなら、空からひきずりおろせばいいんだね!」
「鬼術・長巻改の要領で、紗雨ちゃんの水を心紺ちゃんの〝砂丘〟にまとわせる」
そこへ、念願の支援が届く。
サメの着ぐるみを被った銀髪碧眼の少女、建速紗雨と、サイドポニーの目立つ少女、柳心紺、瓶底メガネをかけた白衣の少女、祖平遠亜の三人が協力。
砂状兵装に水をまとわせた刃を、ウォータージェットのように断続的に打ち出して、ドラゴンヴァンプの翼を引き裂いてみせた。
「GAAAAAA!?」
ドラゴンヴァンプは桃太を爆撃中だったものの、翼を失ってはいかんともしがたく、異界迷宮カクリヨの第九階層、〝木の子の谷〟の底へと墜落する。
「地球と異世界クマ国。二つの世界の、紗雨ちゃんファンクラブの力を合わせるんだ」
「出雲さん、水を温めます」
「叶うならば、親分を竜から救い出す。出来なくても、このままにはしておけませんぜ」
「恩義のためといえ、反社からテロリストに移って、最後はファンクラブに協力だなんて。……人生何があるかわからないものだっ」
続いて、冒険者パーティ〝W・A〟と防諜部隊ヤタガラス、おまけに元勇者パーティ〝K・A・N〟のメンバーまでが鬼術で支援。
ドラゴンヴァンプがウォーターカッターの余波でかぶった水を、急速に温めて水蒸気爆発を起こし、全長五メートルの巨体を揺るがせた。
「桃太君、トドメを!」
「コケーッ。鬼術・光学迷彩ですわあ。矢上先生と力を合わせれば、こんなことだって出来ます」
更に、焔学園二年一組の担任教師、矢上遥花と、〝鬼勇者〟の一人、六辻詠が、〝空王鬼ジズの羽根〟で見えないよう細工を施した〝夜叉の羽衣〟を伸ばして、竜をがんじがらめに拘束する。
「ありがとう。遥花先生、詠さん!」
桃太は歓声をあげながら、崖を蹴って竜の懐に飛び込みつつ、短剣に向かって語りかけた。
「ファフ兄さん、今、業夢さんの本体はどこにいるかわかりますか? 喉や胸に穴を空けても殺しきれなかった以上、〝取り込んだ人間が弱点〟じゃないかと思うんです」
『なるほど、あの悪人がまだ生かされている以上、その可能性はある。奴さんは、心臓の下から腹にかけて埋まっているね。けれど、桃太君、七罪業夢すら殺さずにことを納める気かい?』
「はいっ」
桃太は短剣内から聞こえる、ファフ兄の言葉に頷き、ドラゴンヴァンプめがけて突っ込んだ。
「我流・鎧徹し。これでどうだああ」
あとがき
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