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第388話 新たな視点

388


「〝鬼神具きしんぐ〟も、信じれば応えてくれるのか。これなら〝斥候スカウト〟でもやれる!」


 西暦二〇X二年八月一二日夕刻。

 額に十字傷を刻まれた少年、出雲いずも桃太とうたは、相棒の金髪少年、五馬いつまがいから借り受けた〝鬼神具きしんぐ〟、〝八岐大蛇やまたのおろち・第五の首、隠遁竜いんとんりゅうファフニールが宿る短剣〟を握りながら感慨深く呟いた。


(〝鬼の力〟は危険だ。けれど、ただ忌避するものじゃない)


 桃太は、異世界クマ国の過激派団体、〝前進同盟ぜんしんどうめい〟に協力する黒騎士が、ロケットパンチやら仕込み銃やらのギミックを楽しそうに扱う姿や――

 マッシブな巨漢青年、石貫いしぬき満勒みろくが意思のある巨大な大剣ムラサマと漫才を繰り広げながら戦う姿――を思い出す。


「黒騎士や満勒さんみたいな関係もあるのかな」

『……』


 一方、吸血竜ドラゴンヴァンプは、必殺を意図した〝影の使役術(シャドーサーバント)〟を相殺そうさいされたことで、最大の脅威きょういが桃太であると再認識したのだろう。


「GAAAAAAA!」


 八岐大蛇・第七の首は大きく息を吸い込んで、たった今まで葬ろうとしていた乂と、彼の首にマフラーのように巻き付く三毛猫に化けた三縞みしま凛音りんねから視線を外し、桃太に向かって赤黒い血にも似たエネルギーの奔流ほんりゅうを放つ。


『桃太君。ドラゴンブレスは凄まじい威力だが、動作の大きい技はカウンターを決めるチャンスだぞ』

「ファフ兄さん、やってみせます」


 桃太はファフ兄のアドバイスを受け、谷の岩肌を蹴りながら上昇と下降を繰り返し、横薙ぎに放出された赤黒い粘液のブレスを回避した。


「足に黄金の力と衝撃波をまとわせて、速度で撹乱かくらんする」


 桃太は、岸壁を熱したチョコレートのように削り、血ノリのごとくベタベタと張り付くドラゴンブレスの残滓ざんしを置き去りに、全長五メートルの巨大竜を挑発するように四方八方へと飛び回る。


「あとで目に物見せてやる、我流・手裏剣。更に、詠さんの光学迷彩を真似して土煙にちょいと手を加えれば、分身殺法のできあがりだあっ」


 桃太が衝撃波をこめた石つぶてで牽制しつつ、谷の中を縦横無尽に駆け回る姿は、土煙に投影されてまるで何十体にも増えたかのように見えた。


「サメエエ! 〝忍者〟や〝行者〟じゃなくて、〝斥候スカウト〟のままなのに、まるで分身してるサメエ!」

「コケーッ。さすがは最愛の執事。鼻が高いですわっ」

「なにあれ、妾もやりたい」

「体力のない賈南さんじゃ、すぐ息切れしちゃうんじゃ。そうか、ひょっとして目的は……」


 桃太の仲間達が喜びながら推測した作戦は、正しかっただろう。


「GAAAA!?」


 ドラゴンヴァンプは、必殺の吐息で大量の桃太像を潰して回るも、とうとう息切れした。


「GAGAGA!!」

 

 影の縄や針を周囲に展開して身を守りつつ、喉元に再びエネルギーを集中し始めた。


「吸血竜ドラゴンヴァンプ。やはりお前は業夢ぎょうむさんじゃない。だから、自分の技の限界や弱点を把握できていないんだ。くらえっ、我流・直刀ちょくとう!」


 が、桃太は全長五メートルの空飛ぶ怪物が呼吸をためた瞬間をチャンスとみて、〝木の子の谷〟の岸壁を蹴り上げながら飛びかかり……。

 乂から借り受けた黄金色に輝く短剣で、吸血竜を護る影の武器を一閃し、快刀乱麻かいとうらんまを断つとばかりに喉元を深々と切り裂いた。

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 兄弟が憑いた刀にどつかれながら悪だくみ(女遊び)に悪徳貴族を巻き込もうとしたのもいますね
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