表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
379/793

第374話 死中に活

374


「こいつ、さっきから学習してやがる。吸血竜ドラゴンヴァンプは、人間の技、〝勇者の秘奥ひおう〟すらも使えるのか!?」


 赤い瞳をした長身の金髪少年、五馬いつまがいは、自らの短剣から伸ばした光刃で抗うものの、ドラゴンが生み出した影の武器は、剣に槍、槌にハサミが数百と数が違う。


「うわあああっ」

「きゃあああっ」


 影の武器を利用した遠距離からの爆撃は、乂の相棒、出雲いずも桃太とうたのクラスメイトや、共闘する異世界クマ国の鴉天狗からすてんぐ達を容赦なく切り刻み、鮮血が谷を赤く染めてゆく。

 仲間達も朝から夕方まで長くつづいた戦闘で、もはや回避する体力も、防ぐための武具を残ってはいないのだ。


「……カムロさん曰く、そもそも〝勇者の秘奥〟は、獅子央ししおうほむらが鬼の技術を、人間でも再現できるように落とし込んだ技だそうよ。由来を鑑みるなら、鬼の首魁たる八岐大蛇やまたのおろちの首なら、できて当然かも知れない。この数、まともにやり合うのは厄介ね」


 乂の首にマフラーのように巻きつく猫に化けた幼馴染、三縞みしま凛音りんねが瞳から炎の熱線を発射して迎撃するものの、焼け石に水のようだ。


「さっきから喋っているのは、クマ国のネコか? リーチ自在というのは、確かに強みだが、親分の〝影の使役術(シャドーサーバント)〟もそうなんだ」

「五馬家……、たとえ〝鬼勇者ヒーロー〟級の攻撃であっても、個人の攻撃じゃ、大蛇の首を止めるには至らないのか」


 業夢の部下だった索井さくい靖貧せいひん郅屋しつや豊輔ほうすけは、乂の攻撃では無理と判断し――。


「おいカラス、ではなかった、葉桜はざくら千隼ちはやよ。ヨシノの里から援軍は呼べないのか? このままではジリ貧だぞ」

「実は、朝から定期的に〝紗雨姫を発見したゆえに迎えを頼む〟と式神を送っているのですが、里に着く前に消滅させられているようなのです」

「日本政府にクーデターを起こした元勇者パーティ〝K・A・Nキネティック・アーマード・ネットワーク〟の残党か、クマ国政府と対立している過激派団体〝前進同盟ぜんしんどうめい〟が兵を伏せているのでしょうか?」


 冒険者パーティ〝W・Aワイルド・アドベンチャラーズ〟の指揮官である、矢上やがみ遥花はるかと、参謀的立場にある伊吹いぶき賈南かなん。そして異世界クマ国の防諜部隊ぼうちょうぶたいヤタガラスの小隊長を務める葉桜はざくら千隼ちはやも、遂に撤退てったいについて検討を始めた――。

 

「挟み討ちにされる危険性を考えれば、クマ国への脱出は困難でしょう。第八階層〝残火ざんか洞窟どうくつ〟へ転進するのはいかがでしょうか?」

「ここから最も近いゲートの先には、先に戦った七罪業夢と同様に、日本へ反乱を引き起こした六辻ろくつじ家と〝SAINTS(セインツ)〟が作りあげた巨大軍事要塞、〝三連蛇城みつらのへびしろ〟があります。騒ぎになれば、確実に見つかってしまう」

「おいおい、前門の虎、後門の狼か。まるで誰かが狙ったかのようなピンチじゃのおっ」


 彼女達は知る由も無いが、七罪業夢を吸血竜ドラゴンヴァンプに変えた、八岐大蛇のエージェント、八闇はちくら越斗えつとが、目障りな桃太と乂を始末しつつ、地球とクマ国の間に異世界戦争を引き起こそうと整えた盤面だったため、退路はどこにもなかった。まさに絶体絶命の死地――。


「シャシャシャ。どいつもこいつも景気の悪い面しやがって。一丁、ド派手な花火をあげてやる。トカゲ野郎め、瑠衣姉さん、いや、セグンダ対策に特訓した必殺技を見せてやる。リン、あれをやるぞ」

「ニャンっ(どうなっても知らないからねっ)」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

ブックマークや励ましのコメント、お星様、いいねボタンなど、お気軽にいただけると幸いです(⌒▽⌒)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 勇者の秘奥って八岐大蛇側の技術なのですか。 今後出て来る敵が、上位互換技を使って来る可能性もありそうです。 獅子央賈南が使っていた、時間停止みたいなのもソレでしょうか。 しかし何が起きるの…
[一言] >セグンダ対策に特訓した必殺技 牛仮面「あと始末に困るような変態技じゃないだろうね?」
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ