第345話 奇襲部隊制圧?
345
西暦二〇X二年八月一二日午後。
冒険者パーティ〝W・A〟は、地球の日本国に対しクーデターをおこし、異世界クマ国を乗っ取ろうとするテロリスト団体〝K・A・N〟と交戦を開始。
「コケケっ。吹っ飛べですわああっ」
「つ、強すぎる!?」
「ただのお飾りじゃなかったのかあ!?」
「勇者パーティである我々が勇者に討たれるなんてええ」
赤い髪を二つのお団子状にまとめた鬼勇者、六辻詠は、ノコギリの如き乱杭歯の目立つ痩せ男、索井靖貧と、カエルのように恰幅のよい丸顔の男、郅屋富輔が率いた二隊、一〇〇人の防衛を見事切り崩し、戦闘能力を底上げする蒸気鎧破壊に成功した。
「詠さん凄いサメーっ。これが空飛ぶニワトリの強さサメーっ」
「ただのニワトリ娘じゃなかったんだ!」
「コケーッ、ニワトリ娘って呼ばないで欲しいですわあ。あ、でも友達ならいいのかな?」
「詠さん、そこで引いちゃだめよっ」
修道服に似たサメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨はここが勝負ところとみて、冒険者育成学校焔学園二年一組の生徒たちと共に、喝采をあげながら中年の悪漢どもへ突撃。
「うそだ、我々はベテランだぞ! お前達のようなガキどもに負けるはずがないっ」
「へえ、異界迷宮カクリヨや異世界クマ国なんて摩訶不思議な世界に来たのに、重ねた経験は悪事だけなの?」
「だったら貴方達は冒険者じゃなくてただの悪党。ダンジョンという、〝冒険の世界〟で勝てるはずがない。鬼術・〝長巻改〟」
「BUNOOOOOO!」
「そんな理屈がああっ」
サイドポニーの目立つ少女、柳心紺が砂状の兵器を固めた剣を振るい、瓶底メガネを祖平遠亜が衝撃波を巻き付けた杖で援護。
トドメに琥珀色の体毛を持つ八本足の虎に似た式鬼ブンオーが体当たりして、索井靖貧らの隊を地に叩き伏せた。
「索井に賛成するのもシャクですが、ルーキーたちに負けるなんてあり得ない。中心にいる紗雨という娘は慕われているようだ。人質にすれば交渉の余地が……」
「そうはいかんサメ。サメ足、サメ股、サメ車なんだサメー」
紗雨は、郅屋隊のテロリストの手をひいては足を刈り、後ろ足を内股に差し込んでは投げ転ばせ、太ももを蹴るように回転させて投げ飛ばしと、縦横無尽に暴れ回った。
「柔道で言うところの、払釣込足に、内股投げ、大車投げですねっ。紗雨ちゃん、後始末は任せて!」
「ぎゃー、リボン!?」
加えて、担任教師である矢上遥花が、投げ飛ばされたテロリスト達へリボンを伸ばし、片端から糸巻きのように拘束して無力化する。
「め、メルヘンながら厄介な連携。しかし、要は投げられる距離まで近づかなければいいのでしょう。我らが〝影の使役術〟〝強欲の槍〟であればそれも可能!」
隊長の郅屋豊輔だけは紗雨の投げ技を警戒し、遠間から影の槍を突き出してきたが――。
「隙ありなんだサメー。今必殺のおおっ、サメアッパー!」
「それ柔道じゃなくて、ボクシングうううっ」
紗雨は巧みな足捌きで影の槍を避けるや、郅屋の腹から胸を抉るように、ジャンプアッパーを繰り出し、天高くぶっ飛ばす。
「なるほど焔学園二年一組。いや冒険者パーティ〝W・A〟だったか。てっきりビギナーズラックと思いきや、三縞家と〝C・H・O〟、四鳴家と〝S・E・I〟を倒しただけのことはある。どうやら実力は本物のようだな」
あとがき
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