第341話 対決! 夜狩鬼士ナイトストーカー
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「業夢様。研修生ごとき、我らが〝影の使役術〟で一掃してやります」
「ぐひゅひゅ。許す! 索井、郅屋、やってみせい」
「〝傲慢の剣〟よ、血をくらえ!」
「〝強欲の槍〟よ。血をすすれ!」
カメレオンのように長い舌を振り回すテロリスト団体、〝K・A・N〟の首魁、七罪業夢の部下である索井靖貧と、郅屋富輔。
痩せっぽちと、太っちょの隊長が率いる上級職〝夜狩鬼士〟二隊合わせて一〇〇名は、それぞれ影から四から五本の剣や槍を生み出して、冒険者パーティ〝W・A〟に襲いかかった。
「くそ、影の武器だと。こけおどしだ。〝戦士〟の頑丈さ。舐めんじゃないぞ」
モヒカンの雄々しい少年、林魚旋斧が率いる重装備の戦士部隊が、〝夜狩鬼士〟隊の前進を止めようと前に出るも……。
「な、なんだ? 傷から、血が、力が抜ける」
「あ、頭が痛い。息が切れて、気分が悪い」
影の剣や槍と斬り合ってわずかな手傷を負った途端、あたかも貧血でも起こしたかのようにフラフラになってしまう。
「林魚、うかつに近づいちゃいけない。あの技、〝勇者の秘奥〟と呼ばれるだけあって、特殊な力があるみたいだ」
「紗雨ちゃんが湿地に誘き寄せてくれたが、相手の方が多いんだ。真っ正直に飛び込んでどうする!」
「リボンを送ります。掴まって!」
軽戦士と斥候隊を指揮する関中利雄と、術師隊をまとめる羅生正之が林魚隊を援護。担任教師の矢上遥花が服の袖から伸ばしたリボンにくるまって辛くも脱出に成功した。
「ギャハハ、そうとも、俺たちの影の武器は切った相手の血と生命力を奪い、己のエネルギーに変えるのさ。親分ほどの数は使えないが、疲れ果てたガキどもと、騙されやすいカラスを狩るには十分だぜ」
「フフフ。靖貧に同意するのはシャクですが、我々は〝影の使役術〟の力を使うことで二個小隊ながら、大隊規模の戦闘能力を発揮するのです」
索井靖貧と、郅屋富輔が、蒸気鎧背部にあるオルガンパイプ状の排気口から赤黒い煙を吐き出しながら勝ち誇り、前進を再開する。
「舞台登場 役名宣言――〝砂丘騎士〟!」
しかし、その前に立ちはだかったのが、琥珀色の体毛を持つ八本足の虎に似た式鬼ブンオーに乗り、濃紺色の蒸気鎧を身につけたサイドポニーの目立つ少女、柳心紺だ。
「変幻自在の武器で戦えるのは、七罪家ばかりじゃないよ。戦闘機能選択、モード〝剣牙〟!」
「BUNOO!」
心紺はブンオーで駆けながら、マントを変化させた剣を発射して影の武器にぶつけ、相殺した。
「な、なにいいい。同質の技だと!?」
「しかも、似た蒸気鎧を着ているというのに、一騎で我ら一〇〇人、四〇〇を超える武器と渡り合うだなんて?」
心紺の背後に同乗する、瓶底メガネをかけた白衣の少女、祖平遠亜は濃紺色の砂状自律兵器が、黒い〝影の使役術〟と互角以上に戦う結果を見て感嘆の息をはく。
「……オウモさん、たぶん七罪家に伝わる〝勇者の秘奥〟の正体を知っていて、対策のために〝砂丘〟を作ったよね。でも、利用させてもらう。咲け、胡蝶蘭。あの筋肉モリモリの石貫満勒を倒すために新たに習得した技、鉄線!」
遠亜は自身に傍迷惑な想いを寄せる石貫満勒と、その相棒たる妖刀ムラサマの技を模倣し、白い鞄の中から大量の鉄線を放ち、泥に足を取られた〝夜狩鬼士〟部隊の一部を拘束する。
「よし、柳と祖平の活躍で陣形に穴が空いたぞ。もう一度やってやらあ!」
「多少は疲れたが、焔学園二年一組生徒一同はいまだ健在。底力を見せてやりますよ」
「代表の出雲がボロボロになってしまった今こそ、異世界の隣人達に我らの勇姿をご覧に入れよう」
「「うおおおおっ」」
あとがき
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