第340話 血を求めるモノ
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「血、血をよこせ!」
「剥製の素材になっていただきましょう!」
七罪家当主にしてテロリスト団体〝K・A・N〟の代表、七罪業夢は、異世界クマ国侵略の一環としてヨシノの里に招き入れた部下の一部を、異界迷宮カクリヨの第九階層〝木の子の谷〟に潜ませており……。
ノコギリのような乱杭歯が目立つ痩せ男、索井靖貧と、カエルのように恰幅のよい丸顔の男、郅屋富輔が、血のように赤い色で塗装した蒸気鎧を着る上級職、〝夜狩鬼士〟部隊五〇人、合わせて一〇〇人を率いて乱入。
業夢に注意を吸い寄せられた、出雲桃太ら焔学園二年一組と、葉桜千隼らクマ国の防諜部隊ヤタガラスを背後から奇襲しようとした。
「うわああ。なんだあっ」
「あ、足元がああっ」
しかしながら、索井隊と郅屋隊が、ランドセルに似た蒸気機関に火を入れて、オルガンパイプめいた排気口から赤黒い煙を吐き出しながら、先を争うように加速した直後。
蒸気鎧兵はぬるりと足をすべらせ、一斉にもんどりうつ羽目になる。
「な、なんだ? 山道の、木の葉に隠れて……っ」
「いつの間にか地面が、沼のようになっているじゃありませんかっ」
「サメっサメエっ。なーにが〝夜狩鬼士〟サメエ。サメは海の狩人サメエ。お前達の血なまぐさい殺気はまるっとするっとお見通しサメエ」
修道服に似たサメの着ぐるみを着た少女、建速紗雨が、栗色の髪を赤いリボンで束ねた担任教師、矢上遥花とハイタッチを交わす。
「索井靖貧さん、郅屋富輔さん。貴方達は、わたしたちを罠にかけたつもりだったのでしょうが逆です。紗雨ちゃんは貴方達が隠れていることを知り、逆に罠へと引き寄せたのです」
「サメっ、サメエ。ちょろいもんサメエ」
紗雨は、落ち葉で埋もれた大地から水を染み出させて湿地を作り、敵を誘い込むことに成功したのだ。
「皆さん、冒険者組合と日本政府の依頼により、焔学園二年一組、いえ、冒険者パーティ〝W・A〟は、七罪業夢を討伐し、テロリスト団体〝K・A・N〟のクーデターと、クマ国への侵略計画をくじきます。〝夜叉の羽衣〟よ、舞え!」
遥花の手繰る赤いリボンが幾重にも分裂して空中を踊り、ぬかるんだ大地に足を取られたパワードスーツ部隊の一角を吹っ飛ばした。
「くそ、小細工をやってくれるっ。親分、秘奥使用の許可を出してくれ」
「業夢様。研修生ごとき、我らが〝影の使役術〟で一掃してやります」
「ぐひゅひゅ。許す! 索井、郅屋、やってみせい」
「「〝傲慢の剣〟よ、〝強欲の槍〟よ。血をすすれ!」」
あとがき
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