表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
342/795

第337話 七罪業夢と狂気

337


がい、この人強いぞ」

「相棒、見かけに騙されるな。七罪ななつみ業夢ぎょうむは素行こそ最悪だが……、英雄、獅子央ししおうほむらが異界迷宮カクリヨのモンスター討伐を始めた黎明れいめい期からのベテランだ。いわば、日本最古の冒険者。戦闘経験で、こいつを上回る奴はいない!」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲いずも桃太とうたと、彼の相棒である金髪少年、五馬いつまがいが、老冒険者の意外な強さに戦慄せんりつする一方……。


「ぐひゅひゅ。わかっておるではないか。新しき英雄、出雲いずも桃太とうたに、生きておった五馬いつまがい。若さゆえの無鉄砲だろうが、二人とも傷を恐れず前に出るのは及第点。勇者たるもの、こうでなければなっ」


 七罪業夢はカメレオンのように長い舌を振り回しながら笑ったものの……。

 近寄れば、巨大な〝嫉妬しっとの鋏〟で制し、離れては一〇〇を超える〝傲慢ごうまんの剣〟を放ち、と影の武器を自在に操って、攻め込む隙を与えない。


「若造どもっ、腰が弾けているぞっ。『おのがために財宝ざいほうむなかれ。むしさびとがそこなひ、盗人ぬすびとによって穿たれる』――〝強欲ごうよくの槍〟よ、貫け!」

「うわっ」

「今度は中距離。あの影、全距離自在かよ」


 加えて、業夢が死角から槍のように突き出したことで、さしもの桃太や乂も避けられず鮮血がしぶく。


「ああ、甘い。獅子央ししおうほむらが亡くなって一〇年あまり、六辻ろくつじ剛浚ごうしゅんらのように、最近のなまっちょろい勇者パーティは、王侯貴族気取りでビルだの城だのに籠もっているから困る。ワシらは冒険者ぞ。自ら戦場に立たねば、血を流すことも、血を浴びることもできんだろうが!」


 業夢は影を繰り出しながら、うっとりと舌鼓したづつみを鳴らす。


「どうだ、出雲桃太、五馬乂。我らに協力するつもりはないか? 先にも言った通り、ワシはヨシノの里をのっとるに留まらず、やがてはクマ国すべてを支配するという大望がある。地球の日本ごとき小国にこだわる他の勇者パーティとは器が違うのよ!」


 桃太は、あまりに稀有壮大けうそうだいな老人の言動に呆れた。


「貴方は、そんなくだらない理由で、地球とクマ国の間で惑星間戦争を引き起こすつもりか?」

「戦争? おかしなことを言うのお。

 出雲桃太よ、お前は異界迷宮を徘徊はいかいするモンスターと戦うことを戦争と呼ぶのかね?

 異世界の蛮族は怪物と同じで〝人間ではない〟。

 東夷とうい北狄ほくてき西戎せいかい南蛮なんばん

 華夏かかたる我等にあらずば、人にあらずっ。討伐とうばつして何が悪い!」


 乂は、業夢が唾を飛ばして説いた暴論にブチ切れた。


「ゲスジジイが、時代遅れの選民思想とイデオロギーに酔っ払いやがって! 相棒。援護を頼む!」

「任せろっ。我流・長巻!」


 桃太が行く手を阻む影の剣と槍を衝撃の刃で斬り散らし、道を確保するや、乂は肉体に風をまとわせ低い姿勢で突進。

 業夢が振るうハサミを踏み台に肩口からぶつかって、舌の長い頭を腕で挟みながら持ち上げ、背後へ倒れるようにして地面へ逆さまに投げ落とした。

 

「垂直落下式ブレーンバスター、こいつは避けられまい!」

「ぐひゅひゅひゅ。風の鬼術を加えたプロレス技など、受けたのは初めてだ。これだから戦いはやめられん!」


あとがき

お読みいただきありがとうございました。

ブックマークや励ましのコメント、お星様、いいねボタンなど、お気軽にいただけると幸いです(⌒▽⌒)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >異世界の蛮族は怪物と同じで〝人間ではない〟 オウモ「クマ国代表のアンチクショーは地球出身だけど?」
[一言] 「異世界の蛮族は怪物と同じで〝人間ではない〟」 まあ、これ、現実の現代でも超えられていない問題とも言えますね……。 ある宗教の信徒でない者は人間ではないから、何をやっても良いとか。 でも七…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ