第327話 冒険者パーティ、W・アドベンチャラーズの戦い
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「カムロ様より指南を受けた、我が術技は精密にして精緻。地上の兵器が如く、延焼させる心配はありません。ここは空中、水気は少ない。紗雨姫とて全力は出せないはず。ならば、私にも勝機はある!」
「千隼さん、強いサメー!?」
「さすがクマ国、底知れない!!」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太と、前髪を伸ばした細身の鴉天狗、葉桜千隼の空中戦は、地上の冒険者パーティ〝W・A〟と、異世界クマ国の防諜部隊ヤタガラスの争いにも影響を与えていた。
「さすがは我らの隊長だ!」
「葉桜隊長にだけ格好はつけさせませんよ」
「我らの方円陣は、地上に縛られない。その真価を見せてやる」
鴉天狗達は竜巻を召喚する大技を放ったことで疲労困憊だったものの、一騎討ちで隊長の千隼が優勢とみるや、精神的な余裕を取り戻したようだ。
後衛が空を飛びながらカマイタチめいた風刃の鬼術を放って牽制しつつ、前衛が錫杖を構えて土壁や石柱を作り、空と地面で一体となった球形の方円陣をがっちりと固めている。
「まさか出雲サンが追い込まれるなんて」
「ならば、紗雨ちゃんに男気を見せるのは今だ。鬼術・氷弾。谷の木々に火をつけないように注意しつつ、空飛ぶカラスどもをぶっ飛ばすぞ」
その一方、紗雨を慕う関中利雄、羅生正之ら男子生徒達も奮起して、球形の防衛陣を包むように矢や氷の弾丸を浴びせかけ――。
「遠亜っち、出雲と紗雨ちゃんを助けにいこう! 舞台登場 役名宣言――〝砂丘騎士〟」
「そうだね、心紺ちゃんっ。その為にも、この防衛陣を突破しないとっ。咲いて胡蝶蘭、対空用のネットを射出」
桃太を憎からず想うサイドポニーの少女、柳心紺が攻防一体型の砂粒兵装で剣や槍を作って射出。
瓶底メガネをかけた白衣の少女、祖平遠亜が内部空間操作鞄から網を撃ち出して地対空戦闘に挑み――。
「コケーっ。出雲さん、〝鬼勇者〟にはなるなと言い含められていますが、執事を救うのは主人の勤めですわ。ただのニワトリではないところ見せてあげる!」
「アハッ、アハハッ。この妾が人の子と協力して、クマ国に挑むとはなっ。まったく退屈させん男よ。出雲桃太!」
本来であれば〝鬼勇者〟である六辻詠と、八岐大蛇のエージェントである伊吹賈南。
大物であるはずが、周囲に変わり者としか思われていない凸凹コンビも参戦して、光を操る術やロープ罠を使って攻勢に出た。
「「なんて勢いだ。ヒメジを襲ったクロヤマなる悪漢達とはまるで別物ではないか。葉桜隊長が評したように、地球の冒険者も侮れないっ」」
このように焔学園二年一組のクラスメイトも、防諜部隊ヤタガラスの隊員に負けじと気合いを入れたため、戦況は拮抗していた。
「シャシャシャ! いい雰囲気じゃないの。代表だけじゃなくて、団員が一丸となってこその冒険者パーティだぜ。もう勝負は見えたっ。リボ……遥花先生、ちょっと気になる気配をみつけた。あの茂みの先にリンと行ってくるぜ」
あとがき
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