表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
322/794

第317話 桃太の不覚!?

317


「さ、紗雨さあめ姫ではないですか? 囚われているはずの紗雨姫がなぜここに? 自力で脱出されたのですね!」

「そもそも捕まってなんていないサメー。だまされないで欲しいサメー」


 クマ国代表、カムロの養女である銀髪碧眼ぎんぱつへきがんの少女、建速たけはや紗雨さあめは修道服めいた青いサメの着ぐるみから伸びる、ヒレのような袖をぶんぶん振って抗議するも……。


「その額の十字傷っ、貴様が悪名高き出雲いずも桃太とうたかっ。紗雨姫に命を救われ、カムロ様に弟子入りを許されながら、クマ国の秘密と宝を盗んで逃げ出しただけでも罪深いのに、紗雨姫をもてあそぶにとどまらず、洗脳までしたのか? いくら紗雨姫が可愛らしいからといって、そうまでして結婚を強いるなんて恥ずかしいと思わないのか?」

「してない。そんなことしてないっ。秘密や宝なんて知らないし、洗脳なんてとんでもないっ。人聞きの悪いことを言わないでくれ!」


 葉桜はざくら千隼ちはやら、天狗達が、出雲いずと桃太とうたへ向ける敵意は強まるばかりだった。


「いいや、貴様が金にものをいわせて美姫を集め、草の根一本も残さぬ略奪大好き男で、死体をもてあそぶヘンタイという悪名は、異世界であるクマ国にまで鳴り響いているぞ!」

「くっそ、修行の途中でカムロさんの屋敷から飛び出したのは事実だけど、話におひれとせびれが付きすぎだ。どんな悪名のミックスだよ!?」


 桃太は何が何だかわからないと、紅葉に染まる異界迷宮カクリヨの第九階層〝木の子の谷〟で頭を抱えるが――。


「なぜ桃太くんに四鳴家おんなのこあつめ六辻家りゃくだつ七罪家したいあそびの罪がなすりつけられているの?」


 そんな桃太を庇うように、焔学園二年一組の担任教師である矢上やがみ遥花はるかがそっと背後に寄り添った。

 彼女は自らの〝鬼神具きしんぐ〟である、栗色の髪を結ぶ赤いリボンに手を触れ、スーツを彩るフリルをゆらめかせながら臨戦態勢に入った。


遠亜とあっち、おかしくない? なーんかピンポイントで嘘が広まってるよ。風説の流布にしても、都市一つに戦争を決意させるのは、やりすぎじゃない?」


 更にサイドポニーの目立つ少女、やなぎ心紺ここんは、身につけた青紫色の蒸気鎧パワードスーツに火を入れつつ、マント状に固めた砂状の〝鬼神具〟、〝砂丘デューン〟をゆらりとはためかせて、桃太の右手に立ち――。


「そうだね、心紺ここんちゃん。デマカセのベースになったのは、〝九郎判官義経くろうほうがんよしつねと師匠である鞍馬天狗くらまてんぐ、その娘に関する虎の巻の逸話〟かな。嘘八百に八大勇者パーティの悪事というヨソの事実を混ぜ込んで、出雲君に悪名を押し付けようとしているみたい」


 瓶底メガネをかけた白衣の少女、祖平そひら遠亜とあも蘭が描かれた鞄を構えつつ、前に進み出て桃太の左手を握りしめる。


「イッツソーハード! 祖平の言う通りだとすれば、コピー能力者とやらが、クマ国に入り込んで印象操作のために、デタラメを流しているんじゃないか?」


 荒事に慣れた乂は、遠亜の考察もあって異常の原因に勘付いたものの――。


「なにがデタラメですか? 現に出雲桃太は紗雨姫だけにとどまらず


色っぽい大人の女性(やがみはるか)〟に、

活発そうな体育会系娘(やなぎここん)〟、

大人しそうな眼鏡少女(そひらとあ)〟、

お人好しそうな娘(ろくつじうた)〟、

陰険そうな悪魔っ子(いぶきかなん)〟、


 と、大勢の娘をはべらせているではないですか? 我らクマ国の秩序を守るヤタガラス隊員として、このような悪漢は見過ごせません!」


 残念ながら、桃太の周囲は誤解されても不思議のない状況だった。


「あ、相棒、なにやってんだー!?」

「ちょ、ま、やってない。まだ何もやっていない」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

ブックマークや励ましのコメント、お星様、いいねボタンなど、お気軽にいただけると幸いです(⌒▽⌒)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 鶏「コケ―!主役たる私について言及しないなんて躾のなってない烏ですわ!」
[一言] 桃太の噂話が、尾ひれが付きすぎていますね(^_^; 実際、女性ばかりと仲良くしている気がするので、間違いではない! とは言え、色々な意味で仕方がないというか、何というか……。 前作のようにハ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ