第311話 三縞凛音を知る三人
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「そして、乂と同じく案内人を務めるネコのリンよ。クマ国はワタシのような意志をもつ獣や、妖怪みたいな格好の住民がいるから気をつけて」
「「な、なんだって!? 情報量が多い!!」」
西暦二〇X二年七月一三日。
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太は、相棒である金髪少年、五馬乂と、三毛猫に化けた三縞凛音が、ホームルーム中のクラスメイト達に受け入れられるのを見て、重い荷物をおろしたかのようにほっと息をついた。
「もう大丈夫、かな。……あいたっ」
が、その直後、肩と背中を力いっぱいに掴まれた。
「そうか、ところで出雲。あの猫ちゃんの正体について、詳しい話を聞きたいんだが!」
「あの三毛猫は、〝S・E・I 〟と戦った時からいたよね? 話を聞かせてもらいたいなあ」
「春に四鳴啓介――〝八岐大蛇・第四の首〟と戦った時は、非常事態だから聞けなかったけれど、共に旅をするのなら見過ごせない。日本政府や冒険者組合は、〝彼女〟の生存を把握しているの?」
桃太は、モヒカンが雄々しい少年、林魚旋斧、サイドポニーの目立つ式鬼使いの少女、柳心紺、瓶底メガネをかけて白衣を着た少女、祖平遠亜の三人に詰め寄られ、タジタジとなった。
彼ら三人は、元勇者パーティ〝C・H・O〟に参加しており、桃太がレジスタンス活動を始めた頃からの付き合いなので……。
〝C・H・O〟の代表だった三縞凛音の顔も、黒幕だった黒山犬斗の手で、猫に似た鬼〝悪魔アイム〟に変化したことも知っているのだ。
「わかった、リンちゃんについて話すよ。俺達が〝C・H・O〟を倒した後、日本政府とクマ国の間で交渉があって、三縞代表は表向き死んだことになっている。だから、今、あそこにいるのは三毛猫のリンちゃんだ」
桃太は周囲に聞こえないよう小さな声で、三縞凛音の生存について語り始めたが、幸いにも級友達は乂や凛音と話すのに夢中で、聞こえていなかったようだ。
「サメー。桃太おにーさんが皆と一緒に、カムロのジイチャンにお手紙を持ってゆくのはわかったけど、ガイはどの〝転移門〟からクマ国に入るサメ?」
修道服めいたサメの着ぐるみをかぶる、銀髪碧眼の少女、建速紗雨は級友を連れての帰郷が嬉しいのか、ヒレに似た袖をふりふり質問し――。
「まあまあ落ち着けよ、サメ子。それなんだが、異界迷宮カクリヨの第九階層〝木の子の谷〟を目指そうとおもうんだぜ」
――実弟のむちゃぶりで新冒険者パーティ〝W・A〟の水先案内人を務めることになった、彼女の幼馴染である五馬乂を振り回していた。
「〝木の子の谷〟に一番近い里はヨシノだったサメ? クマの里へ向かうのに、ずいぶん遠回りするサメ?」
「アイキャントヘルプイット(どうしようもない)。過激な反政府団体の〝前進同盟〟が暴れ回っているからな。大昔に江戸幕府がやった鎖国政策とか海禁政策みたいに、今やクマ国も地球や異界迷宮カクリヨとは通行制限中なんだぜ。連中の勢力圏なら通れなくもないだろうが、皆もルイ姉、いや、あの〝ビキニアーマーの女剣士セグンダ〟さんと鉢合わせするのは嫌だろ?」
「「絶対に別の道をいこう」」
乂の問いかけに、セクシーな恐るべき鬼、セグンダの脅威を思い出した学友達が、即答したのは言うまでもない。
あとがき
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