第307話 桃太、新冒険者パーティを設立す
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「コケーッ。焔学園二年一組の研修生の中には、御親族の安否を恐れている方もいらっしゃるでしょう。でも、心配ありません。なぜなら、六辻家の当主、勇者パーティ〝SAINTS〟代表の六辻詠はここにいますわ。わたくし、七罪家の血も引いていて〝K・A・N〟代表の継承権もあるのです。六辻家の幹部と七罪業夢を牢屋に入れた後は、わたくしが皆様のご実家を保護しますわ」
「「まじかよ!?」」
二つのお団子髪でまとめた赤い頭髪の上に、天使を連想させる光輪を浮かべた少女、六辻詠が断言するや、羅生正之ら八大勇者パーティに縁ある少年少女達は、額から大粒の汗を流して動揺した。
「ま、待ってくれ。おれは六辻詠様と直接会ったことがある。貴方とは、別人だったはず……」
「ここにいる詠さんの身元であれば、八大勇者パーティの一つ、勇者パーティ〝N・A・G・A〟代表のボク、五馬碩志が断言しましょう。普段、表に出ている六辻家の当主は、〝SAINTS〟の幹部達が用意した影武者にすぎません。その証拠に、本物である詠さんは六辻家に伝わる最強の〝鬼神具、〝空王鬼ジズの羽根〟を持っています。見せていただけますか」
「コケーっ。かまいませんわ。ジズ、力を貸して!」
六辻詠は、同じく勇者と称えられるよく日に焼けた肌の癖毛の少年、五馬碩志に勧められるがまま、、二つのお団子髪でまとめた頭頂部に浮かぶ、七色に輝く光輪を〝鬼面〟に変化させて被った。
「舞台登場 役名宣言――〝鬼勇者〟!」
詠が名乗りをあげるや、彼女の背中から真っ白な翼が生え、地味なジャージに包まれた大きな胸とお尻を守るように、七色に輝く一二枚の光輪が出現する。
「コケーっ。さあ、御覧あそばせ。これが、六辻に伝わる〝勇者の秘奥〟、〝空中浮遊〟ですわあっ!」
「「マジで空を飛んでるっ。ニワトリじゃなかったのかあああ」」
羅生正之ら、六辻家と〝SAINTS〟、あるいは他の勇者パーティに縁深い生徒達は、それが故に一般には秘匿された情報にも触れており、キャンプ地の青空にふわふわ浮かぶ詠が本物だと確信できた。
「更にっ、迷える子羊ともにいいことを教えてやろう。出雲桃太は、日本政府から親書を預かっている。これの意味するところはわかるな? 正当性を示す〝錦の御旗〟は、犯罪結社に堕ちた六辻でも七罪でもなく、こちらにあるということだ!」
昆布のように艶のない黒髪が目立つ、先日食べ過ぎてふっくらしてしまった少女、伊吹賈南が、冒険者パーティ加入書類を手に、ダメ押しとばかりに言ってのけるや――。
「おれはしょうきにもどった。詠様の為に頑張るぞー」
パフォーマンス効果は絶大で、派閥のまとめ役だった羅生は、手のひらをぐるんぐるん返して参加書類へ署名。
「「いやまあ、出雲や紗雨ちゃんには世話になってるし、実家を説得できるなら参加するよ」」
慎重だった研修生達も雪崩をうったように続いた。
かくして、桃太は、六辻詠や、五馬碩志、伊吹賈南らの力を借りることで、焔学園二年一組の研修生全員を一人も取りこぼすことなく仲間に加えることができた。
「それで、出雲が作るパーティの名前はなんて言うんだ?」
「ええ、新パーティの名前は大切よ」
「それなんだけど、皆、聞いて欲しい。俺たちが作る新しい冒険者パーティは、〝自由奔放な冒険者たち〟を意味する〝Wild Adventurers (ワイルド・アドベンチャラーズ)〟、略称は〝W・A〟にしようと思う」
あとがき
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