第306話 桃太、焔学園二年一組のクラスメイトを勧誘する
306
時は、六辻家と七罪家がクーデターを起こす前に遡る。
呉陸喜が扮する黒騎士達が、冒険者パーティ〝G・C・H・O〟を結成し、テロリスト団体〝SAINTS〟や、〝K・A・N〟との交戦準備を始めた頃――。
陸喜の親友であり、彼の手で額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太もまた、新たな冒険者パーティを結成すべく動き出していた。
「昨日、俺たちを助けてくれた勇者パーティ、〝N・A・G・Aの代表、五馬碩志君が届けてくれた獅子央孝恵校長の知らせによると……。
同じく勇者パーティだったはずの六辻家の〝SAINTS〟、七罪家の〝K・A・N〟が、三縞家の〝C・H・O〟や、四鳴家の〝S・E・I 〟に続き、日本国へのクーデターを企てている。俺は連中の暴挙を止めたい。その為に新しい冒険者パーティを作りたいんだ。どうか協力して欲しい」
西暦二〇X二年七月一三日の早朝。
異界迷宮カクリヨの第六階層、〝シャクヤクの諸島〟のキャンプ地で朝食後に開かれた、冒険者育成学校焔学園二年一組のホームルームで、桃太は新パーティ結成を宣言し、クラスメイトにパーティメンバーに加わって欲しいと頼み込んだ。
この勧誘に対して、最初に声をあげたのは――。
「ハイ、ハーイ。もちろん私と遠亜っちも、参加するよ。ね、ブンオー」
「BUNOO!」
八本足の虎に似た式鬼ブンオーを連れたサイドポニーの目立つ少女、柳心紺――。
「そうだね、心紺ちゃん。私たち、役に立つよ」
心紺の親友である、瓶底メガネをかけて、白いスーツケースを手にした白衣の少女、祖平遠亜――。
「よくぞ誘ってくれたぜ。この林魚旋斧、出雲の力になると決めていた」
リーゼントが雄々しい大柄な少年、林魚旋斧――。
と、桃太がテロリスト団体〝C・H・O〟のクーデターを阻止した頃から付き合いのある三人だった。
「おれ達も参加します。出雲サンってば、水臭いなあ。もっとはやく相談してくれたら良かったのに」
また、桃太と仲の良い天然パーマが目立つ小身痩躯の男子生徒、関中利雄ら、一般家庭出身の生徒達も続々と参加を表明したが――。
「待て待て待て。確かに出雲には何度も命を救われたが、我が家は六辻家や、勇者パーティ〝SAINTS〟との付き合いが長いんだ」
「私の新パーティ参加が原因で職を失った、なんて言われると……」
「俺たちはまだ研修生だぞ。いきなり言われても、その困る」
七三分けで髪を固めた神経質そうな男子生徒、羅生正之と、その取り巻きである八大勇者パーティゆかりの生徒たちは、新パーティの参加に消極的だった。
しかし、ここで意外な人物が声をあげる。
「コケーッ。焔学園二年一組の研修生の中には、御親族の安否を恐れている方もいらっしゃるでしょう。でも、心配ありません。なぜなら、六辻家の当主、勇者パーティ〝SAINTS〟代表の六辻詠はここにいますわ。わたくし、七罪家の血も引いていて〝K・A・N〟代表の継承権もあるのです。六辻家の幹部と七罪業夢を牢屋に入れた後は、わたくしが皆様のご実家を保護しますわ」
「「まじかよ!?」」
あとがき
お読みいただきありがとうございました。
ブックマークや励ましのコメント、お星様、いいねボタンなど、お気軽にいただけると幸いです(⌒▽⌒)