第305話 覇者へと至る第一歩
305
「安らかに眠れ! 最後の魔弾!」
「バカな、ばかなあああ!?」
黒い鎧兜に身を隠した、呉陸喜が放った必殺の弾丸は、狙い違わず三メートル近い怪鳥、ガキソンとなった孟利座玖の心臓部を撃ち抜いた。
「ギョエエエっ、いやだああっ。もっと奪っテ、モットモットモットオオ」
孟利座玖は下半身と心臓を失ってなお、空中でバタバタと暴れ、黒騎士達が乗る〝飛行大盾〟の場所まで落下してきたが――。
「慈悲だ。バカモン」
「ギョ!?」
彼を憐れんだ鉛色髪の巨漢青年、石貫満勒が鉄塊じみた大剣、妖刀ムラサマで首を刎ねたことで、遂に沈黙した。
「満勒、やったな」
「鼻が高いでち」
「ありがとう! 黒騎士とムラサマのおかげだ」
その後、飛行大盾に乗った二人と一振りは、ハイタッチを交わした後、〝禁虎館〟の天守閣中庭へと舞い降りる。
「最後にしめるのは、満勒大将の役目だ」
「カッコいいところ、見せて欲しいでち」
満勒は、黒騎士とムラサマに背を押されるように、天守閣に集まった群衆の前に進み出た。
「みんな、お疲れ様。俺様たちの完全勝利だ。頼りにならない日本政府をぶん殴り、腐敗した八大勇者パーティをぶっつぶす。古き混沌を破壊し、新たな秩序を創る。目を開いて見るがいいっ。俺様と冒険者パーティ〝G・C・H・O・〟の覇道は、ここから始まる!」
歓声があがる。
満勒の仲間である冒険者パーティ〝G・C・H・O・〟のバイク隊員も、翼の生えた怪物から元の肉体を取り戻したテロリスト団体〝SAINTS〟団員も揃って雄叫びをあげた。
「うおおおおっ。〝G・C・H・O・〟万歳、石貫満勒、ばんざああい!」
ゆえに、戦の終わった城を去る男。
七罪業夢の部下、晴峰道楽の声が聞こえていたのは、聴覚を強化していた黒騎士だけだろう。
「〝禁虎館〟が、かくもたやすく陥落するとは、なんと不甲斐ない。〝前進同盟〟なんて異界の蛮族に頼るからこうなるのだ。まあいい、六辻と、〝SAINTS〟には、〝三連蛇城〟で時間を稼いでもらう。全ては業夢様の掌の上……我々、七罪と〝K・A・N〟にとって、真の戦場は、異世界クマ国なのだから」
かくして一人の逃亡を許したものの、石貫満勒が旗頭となった〝G・C・H・O〟は〝SAINTS〟の拠点、そのひとつを攻略、己がものとした。
「ヒャッハァ! 〝SAINTS〟と勝ってわかったぜ。出雲桃太と柳心紺、奴らこそ、俺様の英雄譚をかざるライバルに相応しい。ならばこの石貫満勒が覇者となり奴らとしのぎを削ろう。そして、祖平遠亜を嫁にするのよ!」
「満勒、がんばるでち。でも、祖平遠亜をよめにするのは、あきらめた方がいいでち」
「ムラサマ、そりゃないだろーっ」
黒騎士は、アウトサイダーめいた冒険者パーティ〝G・C・H・O〟の雰囲気は気に入っていたものの、常日頃の騒々しさにはため息を吐かずにはいられなかった。
(トータ。私はここで強くなる。それはそれとして、満勒大将も、ムラサマちゃんも、オウモさんも、道子さんも、セグンダさんも、愛情表現がおかしいから、リウは絶対に近づけないようにしよう……。しかし、晴峰道楽という七罪業夢の部下、〝K・A・N〟の冒険者、変なことを言っていたな。真の戦場はクマ国だと? 我が友、桃太。そちらは無事だろうか?)
あとがき
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