第297話 天翼隊の爆撃
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「異界迷宮カクリヨの中では、機械は使えない。しかし、鬼術を併用すれば、爆撃だって再現できるのだ」
「「これぞ我らが必勝の連携。天の裁きに怖れおののくといい」」
テロリスト団体〝SAINTS〟が建てた城塞〝禁虎館〟の城主、孟利座玖と、彼が率いる精鋭部隊〝天翼隊〟の隊員達が大口を叩くだけのことはあり……。
赤い大光球は無数の小さな光となって飛び散り、花火玉に似た火薬爆弾に着火して巻き込みながら、あたかも津波や雪崩のごとき連鎖的な大爆発を起こした。
「ファファファ。ちょっと外で見てくる」
「セグンダさん。今は外に出て行っちゃだめー!?」
あまりの威力に驚いたか、冒険者パーティ〝G・C・H・O〟の総大将、石貫満勒の師であるセグンダが、大型バスに似た移動拠点ホバーベースを飛び出し――。
ハンドルを握る黒髪の女性、炉谷道子は同僚の暴走を見て叫び――。
「ヒャッハァ、なんて爆発だ。門と橋が歪んでゆくぜ」
「喜んでいる場合かあ、でちっ」
鉛色の髪を刈り上げた巨漢青年、石貫満勒と、彼の右腕に抱かれた日本人形めいた少女、ムラサマが外の光景を見て、素っ頓狂な声をあげる――。
「皆、背を低くするんだ。バイクに潰されないよう注意しろ」
「「うおおおおっ!?」」
呉陸喜が扮する黒騎士や、〝G・C・H・O〟の団員達は、ホバーベースと蒸気バイクが生み出す球状の防御結界に守られていたが、外側の建築物は違う。
天翼隊の爆撃が生み出す膨大なエネルギーが、城門や吊り橋、石垣、見張り台といった建築物を紙細工のように引きちぎる様子を見て、驚きの声を止められなかった。
「「やったか! これだけの爆撃を受ければひとたまりもあるまい!!」
一方、孟利座玖と、テロリスト団体〝SAINTS〟の精鋭部隊は、冒険者パーティ〝G・C・H・O〟の団員達が集まっていた、〝禁虎館〟の入り口を吹き飛ばし、周辺一帯がもうもうたる土煙に包まれた様子を見て勝利を確信したらしい。
「「いやっふううう!!」」
それも自然だろう。バイク部隊は揃って喉も枯れんばかりの叫びをあげて、周囲の建築物はあたかも焼け焦げた積み木やジェンガが崩れたような、無惨な姿を晒していたのだから。
(だが勘違いだ。我々があげた声は悲鳴などではないっ……!)
生きていた黒騎士は、かぶった兜の聴覚素子が捉えた、敵部隊の勝利宣言に苦笑した。
「舞台登場 役名偽装――〝剣鬼〟! 待たせたね、真打ち登場ってね」
ホバーベースから飛び出したのは、二本のツノが生えたサンバイザーに似た仮面をかぶり、翠玉色の細いブラジャーのような金属製胸当てに、股間を守る際どいV字のガードという、白い生足が艶めかしい水着鎧を身につけた絶世の美女セグンダだ。
「「セグンダさんだ。セグンダさんが来たぞ!!」」
冒険者パーティ〝G・C・H・O〟の団員達が上げていた声は悲鳴ではなく、歓喜に他ならない。
「奥義開帳、飛燕返し!」
美しき女剣鬼セグンダが白く輝く太い足を踏み出して、身の丈よりも長い緋色の刀を振るうや、橋や門のパーツのような瓦礫にとどまらず、爆風の生み出す衝撃波すらも跳ね返した。
あとがき
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