第296話 禁虎館城主、孟利座玖の猛攻
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「舞台登場 役名宣言――〝堕天御使〟! くたばれカスどもおおお!」
西暦二〇X二年八月一〇日午後。
呉陸喜が扮する黒騎士は、眼前に建つ和風の城塞、〝禁虎館〟の黄金の虎が飾られた天守閣から、日本国に反乱を引き起こしたテロリスト団体〝SAINTS〟の精鋭部隊、〝天舞隊〟人が黄色い軍服を着て飛び立つのを視認し、すぐさま警告を発した。
「満勒大将、空から敵の攻撃が来るぞ。総数、二〇。全員、飛行能力を備えた上級職だ!」
「ヒャッハア。黒騎士、偵察してくれて、ありがとよ。炉谷さん、ホバーベースの防御結界を作動してくれ。バイク隊は車を中心に集まって、防御用の鬼術符を用意!」
鉛色の髪を刈り上げた巨漢青年、石貫満勒は、自らが束ねる冒険者パーティ〝G・C・H・O〟の団員達へ迷わず防戦を指示――。
「皆さん、防御符をバイクにつけて、ホバーベースに密着してください。防御結界を発動します」
「「うおおおお」」
大型バスに似た移動基地、ホバーベースのハンドルを握る、長い黒髪のスレンダーな女性、炉谷道子は、車体を中心に、空中を含め半径二〇メートルをカバーする光り輝く文字の描かれた防御結界を展開。
バイクに乗った団員達も、予め配られていた衝撃緩和や発火防止用の術が込められた札をポケットから掴み出し、愛車にペタペタと貼り付ける。
冒険者パーティ〝G・C・H・O〟は、会議にかまけて対応の遅れた元勇者パーティ〝SAINTS〟とは対照的に、キビキビと迎撃態勢を整えた。
「この孟利座玖様を前に、無駄な抵抗をするっ!」
「「我々、天舞隊こそ、地に堕ちながらも天に選ばれし御使いよ。勝利は最初から決まっている」」
しかしながら、〝禁虎館〟を飛び立った、〝SAINTS〟の精鋭部隊二〇名は、背の翼や箒や絨毯に乗って空を飛びながら、〝G・C・H・O〟の団員達を見下ろしつつ、高らかに勝利を宣言。
「我が〝鬼神具〟、〝アブラメリンの魔導書〟の力を見せてやる。腐ったミカンどもはあ、デリートだあああっ。光球爆散!」
猛獣に似た鬼面を被り、金銀で着飾った成金趣味の男、孟利座玖が、背から生えた青黒い翼ではばたきながら、頭上に赤々と輝く巨大な光球を作り出し、〝G・C・H・O〟団員が集まる城塞の入り口、建春門に向かって放ち――。
「「火薬爆弾投下」」
続いて天舞隊の隊員が、箒や絨毯で空をかけながら、花火玉に似た爆薬を投下した――。
「ヒャッハァ。爆弾だって? 俺様だって知っているぞ。異界迷宮の中じゃ機械は使えないってなあ!」
「満勒のあほー。そんなもの、対策されるに決まっているでち!」
満勒が途中、自信満々で的外れなヤジを挟んだものの、孟利と彼の部下達は、空を舞いながら自信満々に解説を始めた。
「そうだ。異界迷宮カクリヨの中では、機械は使えない。しかし、鬼術を併用すれば、爆撃だって再現できるのだ」
「「これぞ我らが必勝の連携。天の裁きに怖れおののくといい」」
禁虎館の城主、孟利座玖と〝SAINTS〟団員が大口をだけのことはあり、赤い大光球は無数の小さな光となって飛び散り、花火玉に似た火薬爆弾に着火して巻き込みながら、あたかも津波や雪崩のごとき連鎖的な大爆発を起こした。
あとがき
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