第293話 第三の難所、〝堕天使の楽園〟
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「黒鎧の男っ。こいつも、空を飛ぶのか」
「さっきから盾は飛んでいただろう? 自分たちだけが特別で、優位であるという思い込みこそ、勇者パーティの弱点だ!」
出雲桃太の親友、呉陸喜が扮する黒騎士は、新兵器〝飛行大盾〟に乗ってテロリスト団体〝SAINTS〟が誇る精鋭部隊、〝天翼隊〟と空中戦を展開。
「囲め囲め」
「袋叩きにしてやれ」
「勇者パーティに歯向かうなど、身の程を知るがいい」
黒騎士を狙い、六辻家の当主代理である、六辻剛浚の親衛隊であることを示す、柿色のユニフォームを着た〝天翼隊〟は、背中の一部を翼に変化させ、あるいは空飛ぶ箒や絨毯に乗って刃物を手に殺到するが、それは待ち望んだ展開だ。
「満勒のバイクほどではないが、私も〝飛行大盾〟には習熟している」
黒騎士は、あたかもサーフィンで波に乗るかのように、空中でアップダウンを繰り返しながら包囲を潜り抜け……。
「飛ぶ感覚がサーフボードに似ていて、心地よいのだよ。カットバックからの、ネット射出!」
黒騎士は空飛ぶ大盾の重心を変えることで、進行方向を一八〇度転換。
肩パーツから電気網を投じて、団子のように集まった柿色のユニフォームを着た天翼隊隊員の翼や箒、絨毯に巻きつけて、こんがりと焼き焦がす。
「「こ、こんな武器があるなんて聞いてない、おたすけええ」」
空を飛ぶ鳥が落ちた後の末路は、言うまでもないだろう。
「さすがは黒騎士、頼りになる男だぜ。祭りだ祭りだ。派手にやるぞおっ!」
「うおおおお。祭り! 祭り!! カーニバルだぜええええっ!」
「第三の難所、〝堕天使の楽園〟も突破でち!」
かくして黒騎士の支援を受けた、鉛色の髪を刈り上げた巨漢青年、石貫満勒と、冒険者パーティ〝G・C・H・O〟の蒸気バイク部隊は、城塞の外に残る敵を掃討。
「ヒャッハァ! 野郎ども、このまま乗り込むぞ」
「イエエエイ! イヤッフウ!」
黒騎士達は、弓兵地獄、城塞地獄、堕天使の楽園という三つの難所を越えて、遂に攻略目標である六辻家と〝SAINTS〟の城塞〝禁虎館〟へ辿り着こうとしていた。
「見えたぞ正門。あれが〝禁虎館〟に名高い建春門か!」
「門を閉じろ。橋を上げろ。援軍が来るまで籠城するんだ!」
残ったテロリスト達は、高さ三メートルに達する城門を閉ざし、巻き上げ用の仕掛けで城内へ続く吊り橋をあげて、満勒達の進入を阻もうとした。
「残念だが、門を作ったのも、吊り橋を作ったのも、我々のスポンサーである〝前進同盟〟だ」
しかしながら、空を飛ぶ黒騎士からすれば、巻き上げ器の場所も、門の比較的脆い場所も丸見えだった。
「つまり、弱点は承知済みということだ。戦闘機能選択、モード〝狩猟鬼〟。攻撃開始!」
黒騎士が空飛ぶ盾で加速し、スノーボードの大ジャンプのような派手な滑空を決めながら、腕の長銃から放った銃弾は、ド、ドン! という轟音をあげて、〝禁虎館〟の顔ともいえる建春門に大穴をあけた。
「このまま撃ち砕かせてもらう!」
「上空からの攻撃だって!?」
「空戦部隊は何をやっているんだ!?」
黒騎士は、右往左往する〝SAINTS〟の冒険者を尻目に、巻き上げ器を撃ち抜いて破壊、吊り橋を落とした。
「門が倒れる? 橋が落ちる? バイクが来るぞ、ぎょわああっ」
「ヒャッハァ! 邪魔なヤツはぶっ飛ばせ。〝禁虎館〟一番乗りは俺様だあっ」
満勒達は、吊り上げ機能が破壊された橋を渡って、堂々と城内へ進入。
黒騎士も後を追い、バイク隊に横づけるように着地して、参謀の炉谷道子が操縦する移動拠点、ホバーベースも到着した。
あとがき
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