第292話 黒騎士と飛行大盾、その真価
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「第二の難所、〝要塞地獄〟突破成功でち!」
「ヒャッハァ! 〝禁虎館〟は目の前だ!」
鉛色の髪を刈り上げた巨漢青年、石貫満勒は、〝G・C・H・O〟の蒸気バイク部隊を率いて、テロリスト団体〝SAINTS〟の誇る要害、その二つを突破した。
「クソクソクソ。なにが〝G・C・H・O〟だ!?」
「元奴隷のちんびら風情が、古い日本政府を革命する偉大なる勇者パーティ〝SAINTS〟に逆らうのか?」
「場所が悪かっただけだ。実力の違いを見せてやる」
柿色のユニフォームと翼を描いた腕章をつけたテロリストの一部は、ハリボテ細工の砦を捨てて逃げ出し、〝禁虎館〟を取り巻く平野、〝堕天使の楽園〟で、剣や槍、盾を持って襲ってきたが……。
「歩兵がバイクに平野で挑むのか? 自殺行為だぞ!」
呉陸喜が扮する、黒騎士は新兵器である飛行大盾で低空で操って刃の攻撃を防ぎつつ、思わずツッコミを入れた。
「「ナイス黒騎士。こいつらバカだあっ、いやっほおおおう」」
満勒ら、〝G・C・H・O〟のバイク隊は、黒騎士が動きを止めた歩兵部隊に向かって突進。
速度とパワー、重量を生かして、容易く跳ね飛ばした。
「ふふふふ、ふざけるなあ」
「我らこそが日本国の支配者なり、愚民どもは従うべきたどとなぜわからん?」
「舞台登場 役名宣言――堕天使!」
しかし、天翼隊も負けるばかりではない。
黒騎士が先ほど倒した孟利蛾超と同じように、ある者は契約した鬼神具の力で翼を生やし、ある者はホウキや絨毯といったアイテムを使って空へと舞い上がった。
「なぜ我々、〝SAINTS〟がこの〝残火の洞窟〟に陣を引いたと思う?」
「灼熱の大地で生きるため、この階層に住む植物や動物は空に活路を見出した。その素材を使った特殊な装備をまとえば、このように空を支配することが可能。地べたにはりついたお前達を殺すことなど容易いわ」
「上級職、堕天使の力を見せてやろう!」
当主代行を務める六辻剛浚が組織した天翼隊。
その中核を占める冒険者の真価は、名の通り空を飛ぶ力を持つことに他ならない。
「勇者パーティ〝SAINTS〟、その傲慢さは胸に痛いな。満勒大将、ここは私に任せてくれ」
「ヒャッハァ! 頼んだぜ」
満勒の許可を得た黒騎士が頷くと、背おうランドセルに似た蒸気機関が獣のようなうなりをあげた。
「舞台登場 役名宣言――〝黒騎士〟!」
黒騎士の瞳のカバーが槌に変わり、視覚素子が赤くかがやく。
「これより対空戦闘に入り、友軍の〝禁虎館〟突入を支援する! モード選択 〝一眼鬼〟蒸気機関全開だ!」
黒い鎧姿の戦士は背負った蒸気機関に火を入れて、オルバンパイプめいた排気口から赤黒い煙を吐き出しながら、ホバーベースより跳躍。
空を舞う〝飛行大盾〟に飛び移った。
「〝飛行大盾〟と合体。これが新兵器の真価、飛行モードだ!」
黒騎士も空を飛ぶことにロマンを感じながら、心の昂ぶるままに天翼隊に肉薄する。
「黒鎧の男っ。こいつも、空を飛ぶのか」
「さっきから盾は飛んでいただろう? 自分たちだけが特別で、優位であるという思い込みこそ、勇者パーティの弱点だ!」
あとがき
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