第291話 第二の難所、〝要塞地獄〟
291
「第一の難所〝弓兵地獄〟突破成功でち!」
「「うおおおっ、やったあああ!」」
鉛色の髪を刈り上げた青年、石貫満勒は、火柱が踊る異界迷宮カクリヨの第八階層〝残火の洞窟〟に轟けとばかりに咆哮、〝G・C・H・O〟の仲間達とともに歓声をあげた。
(満勒。よくやった。だが、戦いはここからが本番だ。鉄壁の要塞をどう攻略する?)
呉陸喜こと黒騎士が、後方の大型車両、ホバーベースの屋根上で、風を吹き出して空を舞う、〝飛行大盾〟を操って警戒する中――。
満勒ら〝G・C・H・O〟蒸気バイク部隊は、オルガンパイプめいた排気口から赤黒い煙を吐き出しながら丘陵を越えた。
そうして、第二の難所である渓谷、〝SAINTS〟の砦群へ突進する。
「なにが覇道だっ、イノシシ野郎め。小さいといえ、この鉄骨コンクリート造りの砦を容易くおとせると思うな!」
「我ら勇者パーティの拠点だぞ。チンピラごときには傷一つつけられん。貴様達の進軍もここまでだ!」
先ほどの斥候と同じ、六辻剛浚の親衛隊だろう。
柿色のユニフォームと翼が描かれた腕章をつけたSAINTS〟の団員達は砦に籠り、投石器を使って迎撃してきた。
さしものバイク部隊も、目の前に立ちはだかる砦の勇姿に怯えをみせるも、ホバーベースのハンドルを握る炉谷道子の声が拡声器で響いた。
「皆さん、恐れることはありません。六辻剛浚は無計画に〝蒸気機関付大八車〟と〝内部空間操作鞄〟を買いすぎた結果、銀行強盗が必要なほどに資金が枯渇しました。その砦も、ちゃんとした建築会社や専門冒険者パーティに依頼せず、中抜きのために外国マフィアがでっちあげた架空会社に砦を施工させたものなのです。黒騎士さん、貴方の目で確かめてください」
「……了解。限定機能選択、モード〝狩猟鬼〟」
黒騎士の兜、その片目が槌から銃の紋様に代わり、もう片方の視覚素子が赤く輝く。
彼が蒸気鎧の機能で分析すると、どうやら砦は鉄の代わりに竹を用い、コンクリートに似せた合成板を使っているようだ。
「道子さんの言う通りだ。砦はハリボテに過ぎない。このまま破壊するぞ!」
「「道子さんと黒騎士さんが言うなら間違いない。いくぞお」」
黒騎士の分析に勇気づけられたか、満勒を筆頭に、蒸気バイクに乗った〝G・C・H・O〟の団員達はフロントブレードで突進し、支柱をあたかも割り箸のようにポキポキと折り、コンクリート壁を障子紙のようにザクザクと引き裂いた。
「やわいやわい、これじゃあワラでも切っているみたいでち。鬼術・鉄線乱舞!」
「ヒャッハァ、ムラサマが聞かせてくれた童話に、三匹のこぶたが小屋を作る話があったな。手抜きのワラの家なんぞ、ひと吹きだ」
満勒のブレードさばきと、ムラサマの鉄線による連携攻撃が大黒柱を断ち切るや、砦は音を立てて崩壊する。
「誰の砦がワラだって? くそくそくそおっ」
「こんな簡単に壊されるなんて、どうなってんだっ。責任者でてこい」
砦の中に詰めていた剛浚の部下達は、崩壊の巻き添えになって潰れ、柿色のユニフォームと翼の描かれた腕章をつけた人影は、原型を残さず赤いシミとなった。
「第二の難所、〝要塞地獄〟突破成功でち!」
あとがき
お読みいただきありがとうございました。
ブックマークや励ましのコメント、お星様、いいねボタンなど、お気軽にいただけると幸いです(⌒▽⌒)